寂・淋(読み)さみしい

精選版 日本国語大辞典 「寂・淋」の意味・読み・例文・類語

さみし・い【寂・淋】

〘形口〙 さみし 〘形シク
咄本・かの子ばなし(1690)中「こなたのやうにゆふてはきゃく衆も見さげらるべし。品をかへてさみしひとお申あれ」
※唐詩選国字解(1791)五言古「此さみしい景色をみるにつけて、故郷を思出して」
③ 見ていてあさましい感じである。さびしい。さもしい。〔天正本節用集(1590)〕
人情本・人情廓の鶯(1830‐44)後「エエ見さげ果(はて)たる淋(サミ)しい根情」
[語誌](1)上代の「さぶし」が平安時代に「さびし」となり、それがさらに変化した語。近世以降「さびし」「さみし」は並んで用いられ、のち「さむしい」「さぶしい」の形もみられる。
(2)現代「さびしい」「さみしい」は同じように用いられるが、古くからあった「さびしい」を標準的語形とみる考えが有力で、放送などでは「さびしい」が採用されている。
さみし‐が・る
〘自ラ五(四)〙
さみし‐げ
〘形動〙
さみし‐さ
〘名〙
さみし‐み
〘名〙

さびし・い【寂・淋】

〘形口〙 さびし 〘形シク〙
本来あるべき状態になく、また、本来備わっているはずのものが欠けていて、満たされない気持を表わす。物足りない。不満足、不景気、憂鬱、物悲しさなどを表わす。さぶし。さみしい。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「帰りてのち、家のさびしきをながめて」
源氏(1001‐14頃)若菜下「世の中さびしく思はずなることありとも」
② 人の気配がなく心細い。ひっそりしている。静かで心細いほどである。また、人が住まずに荒れている。さみしい。
※阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)五八「むぐらおひ荒たる宿のさびしきはかりにもおきのすだくなりけり」
※新古今(1205)冬・六七四「ふる雪にたくもの煙かき絶えてさびしくもあるかしほがまの浦〈九条兼実〉」
[補注]上代では①の心情を表わすのに「さぶし」の形が用いられている。
さびし‐が・る
〘自ラ五(四)〙
さびし‐げ
〘形動〙
さびし‐さ
〘名〙
さびし‐み
〘名〙

さむし・い【寂・淋】

〘形口〙 さむし 〘形シク〙 =さびしい(寂)
洒落本・二筋道三篇霄の程(1800)三「妹迄にくろうをかけさむしい勤をさせたゆへに」
行人(1912‐13)〈夏目漱石〉帰ってから「二郎、御前が居なくなると、宅は淋(サム)しい上にも淋(サム)しくなるが」
さむし‐が・る
〘自ラ五(四)〙
さむし‐さ
〘名〙

さぶし【寂・淋】

〘形シク〙 本来あるべき状態になく、また、本来備わっているはずのものが欠けていて、気持が満たされない。さびしい。
※続日本紀‐宝亀二年(771)二月二二日・宣命「歳時積り往くまにまに、佐夫之岐(サブシキ)事のみし、彌(いよよ)(まさ)るべきかも」
[補注]平安以後は「さびし」の形で用いられる。
さぶし‐さ
〘名〙

さびし‐・む【寂・淋】

(形容詞「さびし」の動詞化)
[1] 〘他マ下二〙 さびしがらせる。さびしく思わせる。
※参考源平盛衰記(1689)三九「去(され)ばとて寂(サビ)しめ奉るべからず」
[2] 〘他マ五(四)〙 さびしがる。さびしく思う。
禽獣(1933)〈川端康成〉「動物相手に暮すのは、もっと自由な傲慢を寂しみたいためだと、彼は紅雀を飼ふのを止した」

さびし【寂・淋】

〘形シク〙 ⇒さびしい(寂)

さみし【寂・淋】

〘形シク〙 ⇒さみしい(寂)

さむし【寂・淋】

〘形シク〙 ⇒さむしい(寂)

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