富川吟雪(読み)とみかわぎんせつ

改訂新版 世界大百科事典 「富川吟雪」の意味・わかりやすい解説

富川吟雪 (とみかわぎんせつ)

江戸中期の浮世絵師,草双紙作者。生没年不詳。日本橋大伝馬町の絵草紙問屋山本九左衛門で,家業が衰え絵師となったとの説もある。1771年まで房信と称した。1760年(宝暦10)ごろから黒本・青本を書き,77年(安永6)までに250種以上の作品を手がけた。《うき世楽助一盃夢》(1762),《風流いかい田分(たわけ)》(1770)など滑稽味が多く,《紅皿欠皿往古噺(べにざらかけざらむかしばなし)》(1777)など民話に取材した作品もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「富川吟雪」の意味・わかりやすい解説

富川吟雪
とみかわぎんせつ

生没年未詳。江戸中期の浮世絵師、草双紙(くさぞうし)(黒本青本)作者。別名房信(ふさのぶ)。俗称は山本九左衛門といい、江戸大伝馬(おおてんま)町の絵草紙問屋の主であり、家業が衰えて絵師に転じたというが確かではない。1772年(安永1)から吟雪に号をかえる。作品は1760年(宝暦10)から77年まで総数280種以上で、そのほとんどは自画作である。内容は多様で、曽我(そが)物の『大磯虎車塚物語(おおいそのとらくるまづかものがたり)』、当世的な滑稽(こっけい)な主人公の『うき世楽助一盃夢(よらくすけいっぱいのゆめ)』、童話を脚色した『桃太郎柿太郎勇力競(ゆうりきくらべ)』、情話風の『風流邯鄲浮世栄花枕(うきよえいがまくら)』など各種にわたり、後の黄表紙(きびょうし)に多く影響した。近世中期の子供の読み物作者の典型である。

小池正胤]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「富川吟雪」の解説

富川吟雪 とみかわ-ぎんせつ

?-? 江戸時代中期の浮世絵師,戯作(げさく)者。
もと江戸日本橋大伝馬(おおてんま)町の絵草紙問屋の主人で,西村重長に浮世絵をまなんだという。宝暦10-安永6年(1760-77)の間に,二百余の黒本,青本をかき,挿絵もえがいた。通称は山本九左衛門。別号に房信(ふさのぶ)。作品に「浮世栄花枕」など。

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