改訂新版 世界大百科事典 「封蠟」の意味・わかりやすい解説
封蠟 (ふうろう)
sealing wax
容器や文書などを密封するために用いられる蠟状物質。蠟を気密性を保つために利用することは古くから知られているが,古代から着色した密蠟を,書簡の封や告知文の印に用いたためにこう呼ばれる。西インド諸島からシェラックが,ベネチアに輸入されるようになってからは,これを混入することが行われている。そのためスペイン産ラックもスパニッシュワックスと呼ばれて,その目的に供されている。現在の封蠟は蠟の本来のものとは異なり,各種の樹脂,ターペンチン,充てん(塡)剤,顔料,精油,揮発性バルサムなどの混合物である。封蠟はその品質により4種に分けられており,また着色封蠟,透明封蠟と区別されることもある。着色には各種の顔料が選択されているが,黒,金,緑,赤,茶,深紅などのものがある。次に高級な赤色の封蠟の処方を例示する。7kgのガムラックを低温加熱して溶かし,かきまぜながら5kgのベニスターペンチン,1~2kgのバーミリオン,70gの炭酸マグネシウムを加える。顔料等が沈殿しないよう絶えずかくはん(攪拌)し,少量の試料をガラス板上にとり,それの着色,硬度などの物性が十分であることを調べたら,加熱をゆるめて,液状に保ちつつ,130gのペルーバルサムを加える。生成物をスティック状の鋳型に流入し,冷却して製品とする。これを対象物の上にかざし,ろうそくなどの火で溶かして液滴として落とし,その上を印章を刻したダイで押して封印する。
→封印
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報