小林勝(読み)こばやしまさる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小林勝」の意味・わかりやすい解説

小林勝
こばやしまさる
(1927―1971)

小説家劇作家本籍は長野県だが、生まれたのは朝鮮慶尚南道。陸軍航空士官学校、旧制都立高校文科甲類を経て、早稲田(わせだ)大学ロシア文学科に転入学したが、レッド・パージ反対闘争に巻き込まれて中退。1952年(昭和27)6月には新宿駅前の火炎びん闘争で逮捕され、下獄。平明なリアリズムの手法で戦中・戦後の鬱屈(うっくつ)した青春を語る点に特色があり、『フォード・一九二七年』(1956)、『軍用露語教程』(1956)はともに芥川(あくたがわ)賞候補となった。59年、獄中戯曲『檻(おり)』を執筆し、翌年、民芸上演新劇戯曲賞を受賞した。いわゆる極左冒険主義時代を運動内部者の目で描いた全五部作の『断層地帯』(1958)、ほかに、『狙撃(そげき)者の光栄』(1959)、『強制招待旅行』(1962)、『チョッパリ』(1970)などがある。

古林 尚]

『『小林勝作品集』全5巻(1975~76・白川書院)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小林勝」の解説

小林勝 こばやし-まさる

1927-1971 昭和時代後期の小説家,劇作家。
昭和2年11月7日朝鮮晋州生まれ。昭和27年火炎びん闘争で逮捕される。反権力闘争をつづけながら,31年「フォード・一九二七年」を発表,芥川賞候補となる。35年「檻(おり)」で「新劇」戯曲賞(現岸田国士(くにお)戯曲賞)。日本人の差別意識をテーマにした作品がおおい。昭和46年3月25日死去。43歳。早大中退。

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