一般には〈戸籍の所在地〉と定義され,都道府県,市区町村,地番号または街区符号の番号で表示される(戸籍法6,13条。戸籍法施行規則3条)。他方,〈戸籍は,市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに,これを編製する〉(戸籍法6条本文)という明文規定があるので,戸籍と本籍の関係は,どちらが先なのか判然としない。なお戸籍制度をもたない欧米各国には,本籍にあたる概念はない。
戸籍簿の第1列上段が〈本籍〉欄で,下段の〈氏名〉欄とともに特定個人の戸籍を検索するうえで不可欠の事項である。この二つをあわせて〈戸籍の表示〉という(9条)。本籍地の市区役所,町村役場に,戸籍の正本が備えられる(8条)。婚姻届などにより新戸籍が編製されるとき(16~22条)は,届出人が本籍地を定める(30条1項)。ただし,届出人でない者について新戸籍が編製されるときは,従前の本籍地に新本籍を定めたものとみなされる(30条3項)。本籍は,日本国内のどこにでも定めることができる。また筆頭者と配偶者の届出により,自由に転籍すること(本籍の変更)もできる(108条)。戸籍制度によって自国民を把握している日本において,本籍は個人を特定するうえで重要な役割を担っている。したがって,日本国民は必ず一つの本籍を持つ。本籍が日本国内のどこにあるか具体的に明らかでない者および本籍が日本国内にあるかないか明らかでない者,またはなんらかの原因によって本籍を持たない者が,戸籍の報告的届出や創設的届出をした後に,本籍が明らかになったとき,または本籍を持ったときは,本籍分明届をしなければならない(26条)。本籍を有しない者は,家庭裁判所の許可,または確定判決によって,就籍が行われる(110条1項,111条)。棄児(捨子)については,市区町村長が氏名をつけ,本籍を定める(57条2項)。
民法旧規定において,〈家〉は祖孫一体の観念上の存在であり,〈家〉,本家・墳墓の地,本籍地の三者は密接不可分の関係にあった。しかし,資本主義の発展によって人口の流動化が促進され,人々の現実の居所を把握する要請から,寄留法(1914公布)に始まる住民登録(住民票)のシステムが,戸籍からしだいに分離・独立していった。戦後の住民登録法の施行(1952)によって,現実の〈戸〉の把握の機能はそれに移譲され,戸籍は日本国民の親族的身分関係の登録機能として純化された。以来,本籍は,住所(民法21条),居所(22,23条)などとは異質の,生活実態をともなわない観念となっている。人々の本籍の定め方は,かつては,皇居の所在地などに置くことも多少はあったが,近年では,住所の異動に合わせて転籍し,現在の住所とほぼ一致させる型が増えている。しかしなお,生家や本家の所在地,祖先累代墳墓の地に定置する人たちも依然多い。本籍意識には,家意識の温床となっているという面がある。
→戸籍
執筆者:星野 澄子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…本籍,本籍地のこと。〈ほんかん〉ともいう。…
※「本籍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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