日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩手一戸トンネル」の意味・わかりやすい解説
岩手一戸トンネル
いわていちのへとんねる
東北新幹線いわて沼宮内(ぬまくない)―二戸(にのへ)間の長さ2万5808メートルの複線鉄道トンネル。掘削断面は約79~85平方メートルで、複線断面の陸上トンネルとしては東北新幹線八甲田トンネルに次いで世界第2位(2012)の長さである。1989年(平成1)に整備新幹線難工事推進事業の一環として調査工事に着手し、1991年本工事に着工、2000年(平成12)には貫通して、2002年12月に供用開始した。
岩手県北部に位置し、東側に北上山地、西側に七時雨(ななしぐれ)山、西岳(にしだけ)等の奥羽(おうう)山脈に挟まれた丘陵地を貫くもので、岩手町沼宮内に南坑口、一戸町鳥越(とりごえ)に北坑口がある。トンネルはほぼ南北方向に位置し、平面線形(路線の平面的な形状)としては、南坑口に半径4000メートル、中央部付近に半径8000メートル、北坑口に半径7000メートルの曲線が3か所あり、縦断勾配(こうばい)は南坑口から3840メートルの岩手町と一戸町の行政境界までは5‰(パーミル)の上り勾配となり、ここを頂点として北坑口まで10‰の下り勾配となっている。
施工方法は山岳NATM(ナトム)(New Austrian Tunneling Method)工法で、南坑口から15キロメートル間および23キロメートルから北坑口までの間は発破(はっぱ)掘削方法で、中間部は凝灰岩中にモンモリロナイト(粘土の一種)を含有し膨脹性があるため、機械掘削方法を採用した。工事は膨圧、突発湧水、地山の崩落等があり、施工は困難を極めた。
[吉川大三]