岩手県北西部,青森県に接する市。2006年1月旧二戸市と浄法寺(じようぼうじ)町が合体して成立した。人口2万9702(2010)。
二戸市南西部の旧町。旧二戸郡所属。人口4981(2005)。馬淵(まべち)川の支流安比(あつぴ)川の中流域にあり,北は青森県,北東は旧二戸市に接する。稲庭岳(1078m),田代山など奥羽山脈に属する山々が町内にあり,町域のほとんどは丘陵である。八戸自動車道のインターチェンジがある。主産業は農業で,米作のほか,タバコ,野菜の栽培,畜産が行われ,特にタバコは県内屈指の産地である。生漆の生産地としても知られ,浄法寺椀を特産する。奈良時代に聖武天皇の勅願によって行基が開山したと伝える天台寺があり,本尊の聖観音像,十一面観音像は重要文化財に指定されている。
執筆者:松橋 公治
二戸市北東部の旧市で,青森県三戸町に隣接する。1972年福岡町と金田一村が合体,市制。人口2万6496(2005)。1591年(天正19)九戸政実が九戸城に拠って南部信直,豊臣秀次らの大軍と戦ったが滅亡し(九戸政実の乱),のち一時南部氏が居城した。九戸城は別名を白鳥城といい,山城から平城に移る過渡期の城として規模の大きいことで知られ,城跡は国指定史跡。中心地福岡の市街地は馬淵川中流東岸の河岸段丘上に立地し,国道4号線に沿って約4kmの街村型の街をつくり,県北の中心都市となっている。主産業は農業で,段丘面と傾斜地を利用した畑作,果樹栽培が主体。特に金田一地区はリンゴ産地で,ホップ,加工用トマトなども栽培されている。江戸時代後期に津軽藩主襲撃を企てた檜山騒動の首謀者相馬大作,地球物理学の田中館愛橘(あいきつ)の生地である。また,幕末期に開設され,その後藩校にもなった会輔社の遺構が呑香(どんこう)稲荷神社に残る。東部に折爪岳,南部に馬仙峡県立自然公園,北部に金田一温泉がある。東北本線(現,IGRいわて銀河鉄道)が通じ,金田一温泉駅は県の北端に位置する。東北新幹線二戸駅がある。
執筆者:川本 忠平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岩手県北部、青森県に接する市。1972年(昭和47)福岡町と金田一村(きんだいちむら)が合併して市制施行。2006年(平成18)二戸郡浄法寺町(じょうぼうじまち)を合併。JR東北新幹線、第三セクターIGRいわて銀河鉄道(旧、JR東北本線)、国道4号(奥州街道)が通じる。市域中央を馬淵川(まべちがわ)が北流し、その河岸段丘上に中心地区の福岡が立地し、市街地は旧国道沿いに約4キロメートルの街村状をなしている。市街地の東方、馬淵川、白鳥(しらとり)川などに囲まれた台地上に九戸城跡(くのへじょうあと)(国史跡)がある。中世、九戸氏の拠点であった地で、1591年(天正19)の九戸政実(まさざね)の滅亡後は南部信直(なんぶのぶなお)が移り住み、盛岡城へ移るまで南部氏の居館となった。
主産業は農業で、段丘面や傾斜地は畑作や果樹栽培に利用される。リンゴ、葉タバコ、ホップ栽培が盛んで、とくに金田一地区はリンゴ産地として知られる。このほかブロイラー、肉牛、乳牛飼育なども盛ん。東部の折爪(おりづめ)岳や馬淵川の峡谷馬仙峡は県立自然公園であり、馬淵川東岸の金田一温泉は盛岡藩主の湯治場であった。国道沿いの堀野遺跡(市の史跡)は縄文時代から古代にかけての遺跡とされ、竪穴(たてあな)住居が復原されている。檜山(ひやま)騒動の首謀者相馬大作(そうまだいさく)(下斗米秀之進(しもとまいひでのしん))、物理学者田中館愛橘(たなかだてあいきつ)の生地。面積420.42平方キロメートル、人口2万5513(2020)。
[川本忠平]
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