精選版 日本国語大辞典 「川漁」の意味・読み・例文・類語
かわ‐りょうかはレフ【川漁・川猟】
- 〘 名詞 〙 川で魚などをとること。川狩り。
- [初出の実例]「明ても暮ても夢を見る壁〈龍眠〉 山猟も川猟もとかくきらひにて〈存義〉」(出典:俳諧・江戸新八百韻(1756)籠何)
川猟とも書く。内水面漁業の一種。大規模に行うことが困難で,かえって古風な漁法を残している。現在,日本各地の河川の沿岸では専業者はほとんどなく,多くは兼業者か遊漁者であるが,近年までポン,オゲ,ミツクリなどと呼ぶ,川漁を行う漂泊生業者がいた。
川漁で用いられる漁法は多岐にわたっている。まず,摑捕(つかみどり)は石の下,岸の虚(うつろ),石垣・岩の穴などに潜む魚を手づかみしたり,水中の石やげんのうでたたいて捕らえたりするものである。少し技法を要するものでは,寒中川底に潜むコイを捕らえる鯉抱(こいだき)がある。筑後川筋や淀川筋には,かつてこれを業とする者さえあったと伝えられる。次に簎(やす)漁・鉤(かぎ)漁というのは,竹の柄の先端に単純な鉄製の簎・鉤を装置した漁具で,突きあるいはひっかけて捕る漁法である。川での釣漁は,要領は海や湖沼で行うものと同じである。特色のあるのは,東北でオキバリ(置針),九州でカシバリ(侵針)などと呼ぶ,夜間釣針に餌をしかけ翌朝ひき上げる方法で,各地にもかなり広く行われる。筌(うけ)漁もまた各地にある。ウエ,オケ,ドウ,モジリ,モンドリなどさまざまの呼名がある。細い割竹を編み筍形筒状にした胴体部にじょうご状のかえしを付けた一種の陥穽(かんせい)漁具で,これを魚の往来する道筋へ設置して誘い込んで捕るのである。施設的なものではすのこを川の中に張り渡し,その端に袋状の囲いをもつ陥穽部で魚を捕るスダテ(簀立)といった漁法がある。こうした流れを横切って構築定置する方法は網代(あじろ)や簗(やな)も同じである。網漁には引網,流し網,投網,伏網などと数多いが,川船に乗って四つ手網を操る四つ手網漁や堰四つ手網漁は琵琶湖に注ぐ河川で特異な技法である。その他,タデの葉,サンショウ・クルミの皮の汁,石灰などを川に流すドクナガシ(毒流),川水を濁すニゴシブチ(濁淵),流れをせきとめて行うセボシ(瀬干),カイボリ(搔掘)なども古風な漁法である。なお,今は観光化して著名な長良川などの鵜飼いも,高知県四万十川上流残存のウヒキ(鵜曳),トリヒキ(鳥曳)習俗にみるように,かつてはさらに広く各地で行われていた。
→川狩り
執筆者:橋本 鉄男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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