化学辞典 第2版 「差スペクトル」の解説
差スペクトル
サスペクトル
difference spectrum, differential spectrum
吸光度で表した二つの吸収スペクトルの差.分散系(懸濁粒子)の吸収スペクトルを通常の方法で測定すれば,入射光 I0 に対する透過光Iのなかには,求めたい光 Id のほかに,濁りの影響によって粒子の散乱・反射などによる光 Ip が含まれるので,吸光度Dは
D = log I0/Id
とはならず,
D = log I0/(Id + Ip)
となる.このような場合,試料1を対照側に,試料2を試料側において測定すると,試料濃度が高ければ,差スペクトルは
ΔD = log (Id1/Id2)
として求められる.もし,両試料にオパールガラスを装着して測定すれば,光は完全に散乱し,濃度が低い場合でも濁りの効果は相殺されて,正しい差スペクトルが得られる([別用語参照]オパールガラス法).この方法は,生化学の分野で利用されており,差スペクトルは酸化状態と還元状態の違いを示すのに使われることが多い.懸濁液の状態で,フラビンやシトクロムなどの呼吸色素や,そのほかの酸化還元物質の存在を知るのに役立っている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報