干禄字書(読み)カンロクジショ(その他表記)Gan-lu zi-shu; Kan-lu tzǔ-shu

デジタル大辞泉 「干禄字書」の意味・読み・例文・類語

かんろくじしょ【干禄字書】

中国字書。1冊。初唐顔元孫の著。干禄とは禄をもとめる意で、官吏登用試験受験者のために作った実用的字体字書。約八百字を四声によって分類し、字ごとに正・通・俗の三体をあげる。顔真卿がんしんけい正書して碑に刻した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「干禄字書」の意味・わかりやすい解説

干禄字書
かんろくじしょ
Gan-lu zi-shu; Kan-lu tzǔ-shu

中国,唐の顔元孫 (がんげんそん) 著。1巻。顔真卿 (しんけい) が大暦9 (774) 年石刻。宝祐5 (1257) 年刊漢字異体字を抄録した顔師古 (しこ) の『顔氏字様 (がんしじよう) 』を整理,増補したもの。六朝時代に漢字の字体が乱れたことを問題にし,字体の標準を定めることを目指している。『唐韻』の韻目に従って問題の漢字を異体字とともに配列し,そのおのおのに正体・通体・俗体の注記を付している。書名は「禄 (ロク) を干 (モト) む」,すなわち官吏登用試験のための正しい漢字を示す意。日本における異体字の研究にとっても重要な文献となっている。

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世界大百科事典(旧版)内の干禄字書の言及

【辞書】より

…それに,これもそうした歴史的な慣習の問題だが,そういうふうに,現在的意味で確実に辞書,辞典でありうるものを含まぬ反面,この〈字書〉という分類は,逆に現在普通にいう辞書とはやや遠いものを含むこともある。《四庫全書総目》の〈小学〉類は,第1類〈訓詁〉,第2類〈字書〉,第3類〈韻書〉の3類に分かれているが,〈字書〉というときこの第2類に含まれる(1)識字教科書としての分類語彙集=《史籀(しちゆう)篇》《蒼頡(そうけつ)篇》《急就篇》など,(2)字形によって文字を分類解説したもの=《説文解字》《字林》《玉篇》《竜龕手鏡(りようがんしゆきよう)》《類篇》《字彙》《正字通》《康熙字典》など,(3)字体についてその正俗等を規定しようとするもの=《干禄(かんろく)字書》《五経文字》《九経字様》など,等々が〈字書〉と呼ばれるほか,1類から3類まで〈小学〉類に属するもの全体を〈字書〉ということもある。〈字書〉は,したがって広狭2様の場合があることになる。…

【俗字】より

…正・俗をわける基準は時代によって異なる。たとえば,中国の漢代の《説文解字》では〈躬〉を〈躳〉の俗字とするが,唐代の《干禄字書》では,ともに正字とする。《干禄字書》は顔元孫の手になる楷書による字形の正・俗を分けた最初の字書であり,その後の字書はすべてこれによる。…

※「干禄字書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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