引剥(読み)ひっぺがし

精選版 日本国語大辞典 「引剥」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐ぺがし【引剥】

〘名〙
① ひっぺがすこと。
洒落本・登美賀遠佳(1782)「どふりでとうけいしのからかさのひっへかしを見るよふだ」
博打一種。また、それに用いた紙。一枚の紙面を六区画に区切り、その一画ずつに人気役者の紋所を描き、賭ける者はそのどれかの紋の上に金銭を置く。紙の両端には上から見えないように二〇個の紋を貼りつけ、その一つを選んで剥がしてみて、賭けた紋と合っていれば、何倍かの金銭を得た。〔博奕仕方風聞書(1839頃か)〕

ひん‐む・く【引剥】

〘他カ五(四)〙 (「ひん」は接頭語) 勢いよくはがす。手荒くはがす。
※人情本・花筐(1841)初「ほんに面の皮を引んむいて遣らうかと思ったが」
二人むく助(1891)〈尾崎紅葉〉二「化の皮を引剥(ヒンム)きくれむと」

ひき‐は・ぐ【引剥】

〘他ガ五(四)〙 引っぱってはぐ。むりにはぎとる。ひっぱぐ。
今昔(1120頃か)二九「此の女房御衣を引剥(ひきはぎ)て、盗人は弃(すて)(にげ)にけり」

ひき‐はぎ【引剥】

〘名〙 おいはぎ。ひはぎ。ひっぱぎ。
※中右記‐永久二年(1114)四月一四日「奏云、法勝寺所司下女、一夜於二条朱雀辺引剥事」

ひ‐はぎ【引剥】

〘名〙 (「ひきはぎ」の変化した「ひっぱぎ」の促音の無表記) 通行する人をおどかして衣類や金、持ち物などをはぎ奪うこと。また、その人。おいはぎ。
※高野本平家(13C前)一二高市の山にてひはきにあひ手をすて命ばかりいき」

ひき‐はが・す【引剥】

〘他サ五(四)〙 引いてはがす。強くはがす。ひっぱがす。また、ひき放す。ひきへがす。
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後「覆(おほひ)新聞紙を引剥すと」

ひっ‐ぱぎ【引剥】

〘名〙 「ひきはぎ(引剥)」の変化した語。→ひはぎ
※米沢本沙石集(1283)一〇本「強盗ひっはきもして」

ひっ‐ぱが・す【引剥】

〘他サ五(四)〙 「ひきはがす(引剥)」の変化した語。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「紙を引剥(ヒッパガ)して」

ひっ‐ぱ・ぐ【引剥】

〘他ガ五(四)〙 「ひきはぐ(引剥)」の変化した語。
※俳諧・談林十百韻(1675)下「朧夜の月をうしろに屓軍〈松意〉 ひっはかれぬるあけぼのの空〈卜尺〉」

ひっ‐ぺが・す【引剥】

〘他サ五(四)〙 引っ張ってはがす。乱暴に引きめくる。ひっぱがす。
滑稽本浮世床(1813‐23)初「女郎の絵とナ。爰の金時の絵をひっぺがして引縛らう」

ひき‐む・く【引剥】

〘他カ五(四)〙 皮や殻などを勢いよくはがし取る。ひんむく。
※海と毒薬(1957)〈遠藤周作〉三「石のような白々しい顔を思いきりひきむいてみたい衝動が」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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