日本の中世には,博奕(ばくえき)/(ばくち)は〈芸能〉であり,その〈道〉があったとみられており,博奕の職能民である〈職人〉は博打と呼ばれた。《新猿楽記》で〈高名の博打〉が描かれ,《二中歴》に宴丸道供(弘)などの双六(すごろく)の名人が列挙され,《梁塵秘抄》に〈国々の博党〉が現れるように,その源流は平安時代後期にさかのぼる。《古今著聞集》にも鎌倉時代初期に,80余人の博打を駆使する伊予国の〈高名のふるばくち〉が姿を見せ,鎌倉時代後期の《東北院職人歌合》には〈道々の者〉の一つとして,烏帽子(えぼし)以外のすべてを賭けとられた裸の博打が描かれている。《多胡辰敬家訓》では,辰敬がみずからの先祖を足利義満に奉公した〈日本一番ノバクチ打〉といい,以後3代にわたって〈バクチノ名人〉だったとしているとおり,室町・戦国時代にも博打は数多く活動していたのである。
しかし博打が職人歌合に描かれたのは《東北院職人歌合》のみであり,当初,巫女(みこ)と対にされていた博打は,室町時代に成立したこの歌合の異本では舟人と対になって現れる。これは鎌倉時代まで,巫女と同様,賽(さい)によって神意を知る呪術的な力を持つとみられていた博打が,室町時代には舟人と組んで船で博奕を打つ富裕な俗人として扱われるようになったことを示すものと思われる。社会の空気の変化,禁圧の強化とともに,博打の地位もしだいに低下していったのである。
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…江戸幕府の刑罰の一つ。流罪(るざい)ともいい,その罪人を流人(るにん)という。離島に送り,島民と雑居して生活させる刑で,《公事方御定書》(1742)以後制度が整った。武士,僧侶神職,庶民など身分を問わず適用され,武士の子の縁坐(えんざ),寺の住持の女犯(によぼん),博奕(ばくち)の主犯,幼年者の殺人や放火などに科された。死刑につぐ重刑とされ,田畑家屋敷家財を闕所(けつしよ)(没収)し,刑期は無期で,赦(しや)によって免ぜられたが,《赦律》(1862)によれば,原則として29年以上の経過が必要であった。…
…1697年(元禄10)江戸幕府が諸大名に公布した法令で,大名が刑罰権を行使しうる範囲について規定したもの。内容は,(1)その大名の領分や家臣だけに関する(一領一家中限りの)事件については,逆罪,付火(放火)のごとき最も重い刑罰(磔(はりつけ),火罪(かざい)=火焙(ひあぶり))を科さるべき重罪であろうとも,大名が審理・科刑しうる(自分仕置を行いうる)こと,(2)しかし他領他支配と関連する事件については,大名は自分仕置権を持たず,月番老中にうかがう,すなわち奉行所吟味願を出して事件を幕府に移すことが必要とされること,を基本とし,ほかに(3)自分仕置を行うにあたっては幕府刑法に準ずべきこと,(4)幕府法上,遠島を科すべき場合,領分内に島がなければ,永牢もしくは親類預(あずけ)などで代替すべきこと,を定めている。…
…権力の強圧にもかかわらず,賭博はこのように絶えることなく万人によって行われつづけたのである。博打(ばくち)【網野 善彦】
[近世]
近世の賭博には賽とかるたが多く使用されたが,かるたは1597年(慶長2)の長宗我部元親の掟書で〈博奕,カルタ,諸勝負を禁ず〉とあり,1655年(明暦1)の江戸幕府の禁令では〈かるた博奕諸勝負堅御法度〉(《御触書寛保集成》博奕之部)とある。 近世初期,新開地の江戸建設,商業の活発化,都市への人口集中などの要因が重なって経済活動が盛んになるにつれ頼母子(たのもし)もしばしば行われるようになった。…
…犯罪についての責任を犯人本人だけでなく,犯人となんらかの関係をもつ一定範囲の他人にまで連帯責任として負わせる刑罰の形態。
[日本]
すでに古代の律令には,四等官の一人に職務上の罪があったとき,他の官吏もこれに連なって従犯の罪に問われることが規定されており,これを〈公坐相連〉といった。ところで,犯人本人だけでなく,犯人の一定範囲の親族にその犯罪責任を及ぼす〈縁坐〉は,より古く《魏志倭人伝》に見え,それが律令や鎌倉幕府法などにおいて,刑罰の対象範囲を決める重要事項として立法されている。…
※「博打」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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