引抜き加工(読み)ひきぬきかこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「引抜き加工」の意味・わかりやすい解説

引抜き加工
ひきぬきかこう

金属の線、棒、管の断面を縮めて長さを伸ばす塑性加工の一種で、主として室温で行われる。断面形は普通、円形であるが、円以外の場合もある。この加工にはダイスとよばれる工具が用いられる。ダイスはきわめて硬い金属の厚い円板で、中心に円錐(えんすい)形ないしらっぱ状の穴があけてあり、穴の出口部分の寸法所定の値に正確につくりあげられている。そして、材料をダイス穴に通し、出口側から材料に引張り力を加えて引き抜くのである。線材の引抜きには線引き機械(伸線機ともいう)が使われる。線引きの場合には、ダイスを通して引き抜かれた線はドラムに巻き付けられるが、棒や管の場合にはまっすぐな製品が要求されるので、ドローベンチという機械が使われる。これは、二つの鎖車に巻きかけられて動くチェーンと、鉤(かぎ)およびつかみを備えた引抜き台車からなり、つかみでダイスから出た材料の先端をつかみ、鉤をチェーンにひっかけると、引抜き台車はチェーンに引かれて架台上を走行し、材料の棒または管をまっすぐに引き抜くのである。このような構造のため、棒、管の場合は1回の引抜きでつくりうる製品の長さはチェーンの長さで決まり、長いものでは20メートルに及ぶ。線引きでは回転するドラムに線を巻き付けていくので全長は数千メートルに及ぶ。また、引抜き加工は引張り力をかけて行う加工なので、1回で大きな断面減少を得ようとすると材料がダイス出口のところで破断してしまうので、工程を何段かに分けてしだいに細くしていくのが普通である。

[高橋裕男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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