(読み)ゆはず

普及版 字通 「弭」の読み・字形・画数・意味


9画

[字音]
[字訓] ゆはず・やめる

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
弓+耳。耳は弓の両端に用いるゆはずの形。〔説文〕十二下に「弓の無く、以て轡(くつわ)のれたるを解くべきなり」とし、耳(じ)声とするが声異なる。重文の字は兒(げい)に従う。兒は虹(こうげい)のの初文で、両端に竜首のある形。それをゆはずにみたてた意象の字であろう。縁は、ゆはずを漆で固定したもの。弭は骨や象で作って装着するもの。金文の賜与に「象弭(ざうび)」という例が多い。弭は御者が馬を御するときに使うことが多く、それで〔楚辞離騒〕「吾(われ)羲和(ぎくわ)(太陽の御者)をしてを弭(とど)めしむ」のように用いる。

[訓義]
1. ゆはず、象や骨・角などで作る。
2. やむ、やめる、とめる、とどめる。
3. おさえる、ひかえる、やすんずる。
4. ほろぼす、なくする、したがう。

[古辞書の訓]
名義抄〕弭 シヅカナリ・トトノフ・ナビク・ワスル・トドム 〔字鏡集〕弭 ホロブ・トドム・ヤム・ミミタリ・ユミノハズ・ナビク・ハル・ワスル・ヤスシ・タナビク・トトノフ・ホドコス・シヅカナリ・ホソシ・オク・ツク・ユミ・イム

[声系]
〔説文〕に弭声としてなど三字を収める。秬鬯(きよちよう)を以て尸(し)(屍体)に浴せしめることをいい、尸を安んずる意がある。

[語系]
弭mieはmieiと声義近く、(び)は〔説文〕三下に「撫するなり」、(び)は〔広雅、釈詁一〕に「安んずるなり」という。彌(弥)miaiも声近く、彌の初文は、霊を安んずる呪儀を示す字であった。

[熟語]
弭口弭散弭耳弭首・弭弭従弭帖弭穰弭飾弭節弭息弭轍・弭頭・弭伏弭服弭兵弭変弭忘弭謗弭翼弭乱
[下接語]
呪弭・象弭・佩弭

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「弭」の意味・わかりやすい解説

弭 (ゆはず)

弓の両端で弦をかけるところをいう。《日本書紀》神武即位前紀には,金色の鵄(とび)が弓の弭にとまったと記す。弓が木製であるばあいに,その両端を細く,あるいは扁平に削って弦をかけやすくし,溝や切りこみを作って弦がはずれないようにしたものは多い。これを木弭(きゆはず)とすれば,骨・角を彫刻して弓の両端にはめたものは骨弭・角弭,金銅・銀などの金属で作ってかぶせたものは金(かな)弭である。弓が腐朽して弭だけが遺物として出土するばあいには,それぞれ弭形角製品,弭金物などと呼んでいる。弭形角製品は縄文時代後期・晩期に多く,長さ3~6cm,底面から穿った円錐形の孔に木弓の末端を挿入したものである。弭金物は5~7世紀の古墳時代の遺品があって,長さ6~7cm,円筒形の基部と幅を薄くした末端との界に,斜面を形成している。千葉県木更津市金鈴塚古墳出土の銀弭は,弓の上端に用いる末弭(うらはず)が短く,下端に用いる本弭(もとはず)はやや長い。
弓矢
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弭」の意味・わかりやすい解説


ゆはず

ゆみはず (弓筈) ともいう。弓の両端の弦をかける部分。上端を末弭 (うらはず) ,下端を本弭 (もとはず) という。丸木弓では末端近くに節をつけ,その近くを細くして,弦をかけやすくしているものもある。古墳時代には弭の部分に着装する金具 (弭金物) も出現している。縄文時代や弥生時代に弭形の鹿角製品があるが,これの用途が弭であるかどうかは不明。平安時代以後,儀仗用の蒔絵弓や螺鈿 (らでん) 弓には,銀の弭金物を用いた。

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