国指定史跡ガイド の解説
みだいがわきゅうていぼう〈しょうぎがしらいしつみだし〉【御勅使川旧堤防〈将棋頭-石積出〉】
山梨県南アルプス市・韮崎(にらさき)市にある御勅使川の扇状地に作られた堤防施設。御勅使川は南アルプスを源として南アルプス市の旧白根町有野で山地を離れ、韮崎市境を流れて旧八田村で釜無(かまなし)川と合流する18.8kmの川で、古くから暴れ川として知られ、甲府盆地中央部まで被害をおよぼし続けてきた。そのため、1541年(天保10)に武田信玄が治水事業を進めたことによる広い意味での信玄堤の一部をなすもので、川が盆地に流れ出す旧白根町有野の扇頂部に石積出と呼ばれる堤防を設けて川の流路を固め、次に洪水時に川の流れを北に回して水を分水する策として、韮崎市竜岡町の扇央部に将棋頭と呼ばれる将棋の駒の形に似た堤防を設けることで、流路を左右に分けて水勢をそいだ。さらに釜無川との合流地点では、激流を対岸の竜王高岩に突き当たるようにして御勅使川と釜無川の激しい流れを相殺したりした。その後、信玄堤を築いて盆地中央部を守ろうとした歴史的な堤防とされる。この堤防は、戦国時代以来の甲州流川除と呼ばれる治水技術の特色を今日に伝える遺跡として貴重である。2003年(平成15)に国史跡に指定され、2009年(平成21)に追加指定があった。石積出へは、JR中央本線ほか甲府駅から山梨交通バス「塩の前入口」下車、徒歩すぐ。将棋頭へは、石積出から徒歩約1時間10分。