徳をもって怨みを報ず(読み)とくをもってうらみをほうず

精選版 日本国語大辞典 「徳をもって怨みを報ず」の意味・読み・例文・類語

とく【徳】 を もって怨(うら)みを報(ほう)

  1. ( 「論語‐憲問」の「或曰、以徳報怨、何如、子曰、何以報徳、以直報怨、以徳報徳」、「老子六三」の「大小多少、報怨以徳」による ) 怨恨ある者を憎まず、かえって恩恵善意で報いる。
    1. [初出の実例]「三軍をば帥を奪ふ可しとは、彼をぞ云べき。以徳報(トクヲもっテウラミヲホウス)とは是をぞ申べき」(出典太平記(14C後)一〇)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

故事成語を知る辞典 「徳をもって怨みを報ず」の解説

徳を以て怨みを報ず

うらみがある相手を憎まないで、逆に恩徳を施すこと。

[使用例] 岸は、終戦時、しょうかいせきが「怨みを報いるに徳を以てす」という精神により、大陸から日本の将兵文民が無事に帰国できたことを感謝した[福田和也*悪と徳と 岸信介未完の日本|2012]

[由来] 「老子―六三」の一節から。老子が主張する「無為(ことさらに何かをしようとしないことによって、すべてをうまく成し遂げること)」の一環として、「徳を以て怨みを報ず(うらみを晴らそうとするのではなく、徳を施すことで相手を自分の影響力の下に置く)」が挙げられています。なお、「論語―憲問」では、「徳を以て怨みを報ず」というのはどう思われますか、と問われた孔子が、「そんなことをしたら、徳に対しては何で報いればいいのか。うらみには正直さで報い、徳には徳で報いることだ」と批判しています。

〔異形〕怨みに報いるに徳を以てす。

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