心延(読み)こころばえ

精選版 日本国語大辞典 「心延」の意味・読み・例文・類語

こころ‐ばえ ‥ばへ【心延】

〘名〙 (「はえ」は、くりのべる意。心の働きを外部におし及ぼすこと)
① ある事柄について考え及んでいること。意見。意向
書紀(720)天武一〇年一〇月(北野本訓)「大山位より以下、小建より以上の人等、各意見(ココロハヘ)を述せ」
② 心を対象となるものに思い及ぼすこと。思いやり。配慮。心づかい。
蜻蛉(974頃)上「八月つごもりに、とかうものしつ。そのほどのこころばへはしも、ねんごろなるやうなりけり」
③ 性格的な心の動きのあらわれ。気立て
※竹取(9C末‐10C初)「たち別れなむことを、心ばへなとあてやかにうつくしかりつる事を見ならひて、恋しからん事のたへがたく」
徒然草(1331頃)九「人のほど、心ばへなどは、ものいひたるけはひにこそ、ものごしにもしらるれ」
④ (「心ばへあり」の形で用いる) 心のひらめき。才気ある心の働き。学問的に、また、専門的に練達した心の働き。
源氏(1001‐14頃)紅梅「心ばへありて、奥おしはからるるまみ、ひたひつきなり」
詩歌などを通じて表現される作者の情意。気分。
伊勢物語(10C前)一「『みちのくの忍ぶもぢずり誰ゆゑにみだれそめにし我ならなくに』といふ歌の心ばへなり」
庭園や美術工芸品などを通じて表現された、作者や主宰者の美的感覚意図。また、その美的感覚や意図により、表現すること。
※源氏(1001‐14頃)帚木「水の心ばへなど、さるかたにをかしくしなしたり」
狭衣物語(1069‐77頃か)一「紙の色、下絵などの心ばへ、人より殊なる御文のほど、しるきなんめれど」
⑦ (比喩的に) 他人に秘してある内輪事情内情一端
※蜻蛉(974頃)上「ちかきとなりに、こころばへしれる人、いづるにあはせて、かくいへり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android