精選版 日本国語大辞典 「心延」の意味・読み・例文・類語
こころ‐ばえ‥ばへ【心延】
- 〘 名詞 〙 ( 「はえ」は、くりのべる意。心の働きを外部におし及ぼすこと )
- ① ある事柄について考え及んでいること。意見。意向。
- ② 心を対象となるものに思い及ぼすこと。思いやり。配慮。心づかい。
- [初出の実例]「八月つごもりに、とかうものしつ。そのほどのこころばへはしも、ねんごろなるやうなりけり」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
- ③ 性格的な心の動きのあらわれ。気立て。
- [初出の実例]「たち別れなむことを、心ばへなとあてやかにうつくしかりつる事を見ならひて、恋しからん事のたへがたく」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- 「人のほど、心ばへなどは、ものいひたるけはひにこそ、ものごしにもしらるれ」(出典:徒然草(1331頃)九)
- ④ ( 「心ばへあり」の形で用いる ) 心のひらめき。才気ある心の働き。学問的に、また、専門的に練達した心の働き。
- [初出の実例]「心ばへありて、奥おしはからるるまみ、ひたひつきなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅梅)
- ⑤ 詩歌などを通じて表現される作者の情意。気分。
- [初出の実例]「『みちのくの忍ぶもぢずり誰ゆゑにみだれそめにし我ならなくに』といふ歌の心ばへなり」(出典:伊勢物語(10C前)一)
- ⑥ 庭園や美術工芸品などを通じて表現された、作者や主宰者の美的感覚や意図。また、その美的感覚や意図により、表現すること。
- [初出の実例]「水の心ばへなど、さるかたにをかしくしなしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
- 「紙の色、下絵などの心ばへ、人より殊なる御文のほど、しるきなんめれど」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)
- ⑦ ( 比喩的に ) 他人に秘してある内輪の事情。内情の一端。
- [初出の実例]「ちかきとなりに、こころばへしれる人、いづるにあはせて、かくいへり」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)