悉曇蔵(読み)しったんぞう

改訂新版 世界大百科事典 「悉曇蔵」の意味・わかりやすい解説

悉曇蔵 (しったんぞう)

平安時代の僧,安然の著で,日本における古代悉曇学の集大成。8巻。880年(元慶4)に成る。種々の古写本があり,江戸時代刊本も数種ある。広く文献をあさり精密な論証をほどこしているが,引用文献の中にはこんにち伝わらぬものも多く,唐代の中国および平安時代の日本の音韻学を研究する上に,直接間接に貴重な資料である。なお安然には,このほか悉曇関係の著述をはじめとして,宗門関係の著書が少なくない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「悉曇蔵」の意味・わかりやすい解説

悉曇蔵
しったんぞう

天台宗学僧,安然 (あんねん) 著。8巻。元慶4 (880) 年成立。写本多数。当時の悉曇関係の文献を収集,検討を加えて集大成した,古代の悉曇研究の代表的なもの。特に,唐の智広 (ちこう) の『悉曇字記』を正統とみなし,その線にそって述べている。逸書からも多数引用されており,中国および日本の音韻研究のうえに欠くことのできない資料である。

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世界大百科事典(旧版)内の悉曇蔵の言及

【悉曇】より

…《大般涅槃経(だいはつねはんぎよう)》の〈文字品(もんじぼん)〉(ないしはそれに相当する部分)に対する注解の形をとって始まった。唐の智広の《悉曇字記》は,この方面における現存最古の専著であり,日本の安然《悉曇蔵》(880)は,初期の悉曇学説を収録していて有用である。【慶谷 寿信】。…

※「悉曇蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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