精選版 日本国語大辞典 「惚惚」の意味・読み・例文・類語
ほれ‐ぼれ【惚惚】
- 〘 副詞 〙 ( 「ほれほれ」とも。多く「と」を伴って用いる )
- ① 思考力を失うなど、放心したさまを表わす語。ぼんやり。
- [初出の実例]「心地もほれほれとして」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)四)
- ② 何かに心を奪われて、うっとりとするさまを表わす語。
- [初出の実例]「いつしかはや、御心も、ほれほれとなりて」(出典:御伽草子・中書王物語(室町時代小説集所収)(室町中))
- ③ 深く心を引かれるようなさま、恋い慕いたくなるようなさまを表わす語。
- [初出の実例]「ほれほれとみかへりたる目つきかほばせ」(出典:御伽草子・秋の夜の長物語(南北朝))
- 「上品で、容色(きりゃう)もよくって、女でも惚々(ホレボレ)する位だったんですよ」(出典:妻(1908‐09)〈田山花袋〉四四)
惚惚の補助注記
( 1 )「ほる(惚)」は老齢や種々の肉体的精神的衝動のために放心状態となる意で、その重複形である「ほれほれ」も基本的にはぼんやりとした精神状態を指した。
( 2 )連濁が起こった時期は明らかでないが、江戸期の辞書類では「ほれぼれ」と連濁していることから、中世末から近世中期がその過渡期であったと思われる。
ほけほけ‐し【惚惚】
- 〘 形容詞シク活用 〙 ( 「ほけぼけし」とも )
- ① ひどくぼけている。老いてもうろくしている。
- [初出の実例]「様ざまにいにしへのあはれなる事も、いささかほけほけしからず仰せらる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
- ② 心をうばわれてぼんやりしている。ひどくぼうっとしている。
- [初出の実例]「心やすかりし御ありさまのみ恋しく、ほけほけしきまでおぼえさせ給けれど」(出典:大鏡(12C前)二)
- [その他の文献]〔改正増補和英語林集成(1886)〕
惚惚の派生語
ほけほけし‐さ- 〘 名詞 〙