語を複合するとき,下にくる語の清音が濁音にかわること。漢語にあっては,新濁とよばれるものにおなじ。漢語のばあいには,本来,濁音であるばあいを本濁とよび,複合によって,もとは清音であったものが濁音になるばあいを新濁とよぶ。たとえば,〈被害〉の〈ガイ(害)〉のガは本濁,〈三階〉の〈ガイ(階)〉のガは新濁である。漢語のばあいには連濁のおこる条件がかなりはっきりしている。すなわち,カ,サ,タ,ハ行音に韻尾[n][m][ŋ]が先行すると,それぞれガ,ザ,ダ,バ(またはパ)行音に転じるのである。〈両国〉(地名)が〈リョーゴク〉であるのは,〈両〉の〈リョウ〉の〈ウ〉が漢字の韻尾として[ŋ]であるからなのである。しかし〈日米両国〉などというときには,もはや〈リョーコク〉というほうがふつうである。これは連濁の原理が,今日では,もはや生きて働かなくなっていることを示すものである。したがって,その反面,伝統的な語にほど連濁がみとめられる。たとえば〈東宮〉〈東西〉に対し,〈東京〉では連濁がおこらない。また,連濁にしたがっていた読み方も,しだいに失われてきている。
国語のばあいには,いかなる条件で連濁がおこるか,一般的にいうことは困難である。ただ歴史的にいうと,漢語のばあいと逆に,連濁で発音される形がしだいにふえてきている。そして,現に動揺しているものもある。抽象的にいえば,熟合の度合がたかまったばあいに連濁があらわれるといえよう。以上に対し,連濁のおこらない複合のばあいについては,その条件をあきらかにすることができる。たとえば,〈カゼ(風)〉のように,すでに第2音節が〈ゼ〉とにごる語にあっては,〈ヤマ(山)+カゼ〉も〈ヤマガゼ〉とはならない。それから,山と川,目と鼻,天と地といったぐあいに対等にむすびつく合成語のばあいには,ヤマカワ(ヤマガワでなく),メハナ(メバナでなく),アメツチ(アメヅチでなく)のごとくである。
執筆者:亀井 孝
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単語が結合した場合に、後項の語頭の清音が濁音化する事象。和語と和語(アオ+ソラ>アオゾラ)、漢語と漢語(精(ショウ)+進(シン)>ショウジン)、漢語と和語(演(エン)+スル>エンズル)の3種がある。和語の場合の連濁がどのような条件下でおこるかは複雑であるが、逆におこらない条件としては、熟合度の低い場合(一語化を完了していない場合)、用言と用言が結合している場合、前項末尾または後項第二音節目が濁音である場合、などが指摘できる。漢語の場合には、平安末期から「新濁(しんだく)」とよばれて、前項末尾が撥音(はつおん)-m,-n,-ŋを有する字の場合の鼻音同化現象としてかなり規則的に発生していたが、今日では連声(れんじょう)と同じく、すでに語彙(ごい)的に固定している。
[沼本克明]
『奥村三雄「字音の新濁について」(京都大学国語国文学研究室編『国語国文』第21巻6号所収・1952)』▽『中川芳雄「連濁涵精」上下(京都大学国語国文学研究室編『国語国文』第47巻2、3号所収・1978)』
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