朝日日本歴史人物事典 「慶政」の解説
慶政
生年:文治5(1189)
鎌倉時代の僧,説話集編者。証月(勝月)房と号す。九条良経の子で道家の兄だが,嬰児のとき障害を負い仏門に入ったとの所伝がある。九条家とのかかわりの深さは事実である。園城寺の能舜,慶範,延朗に師事,明恵にも学ぶ。承元2(1208)年ごろ西山に隠棲。渡宋し,建保5(1217)年宋から明恵に音信を送る。一切経などを将来,『証月上人渡唐日記』(佚書)を著す。『続本朝往生伝』などの往生伝を書写し,承久4(1222)年仏教説話集『閑居友』を完成する。西山に法華山寺を創建,嘉録2(1226)年『法華山寺縁起』を著し,延応1(1239)年には道家の病平癒の祈祷における天狗の託宣を『比良山古人霊託』に著す。ほかに『渡宋記』の書写や『漂到琉球国記』などの著作がある。『続古今和歌集』以下の勅撰集に22首入集,釈教歌が多い。『沙石集』に説話が載る。仏道者としての自覚を貫いた生涯である。<参考文献>図書寮叢刊『諸寺縁起集』,橋本進吉「慶政上人伝考」(『日本仏教全書』),平林盛得「慶政上人伝考補遺」(『国語と国文学』1970年6月号)
(今村みゑ子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報