閑居友(読み)カンキョノトモ

デジタル大辞泉 「閑居友」の意味・読み・例文・類語

かんきょのとも【閑居友】

鎌倉時代説話集。2巻。承久4年(1222)成立。著者は慶政とされる。上巻21話・下巻11話を収め、出家・発心などの仏教的説話からなり、下巻は女性の話を主とする。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「閑居友」の意味・読み・例文・類語

かんきょのとも【閑居友】

  1. 鎌倉前期の説話集。上・下二巻。慶政作か。承久四年(一二二二)頃成立。発心譚、往生譚などの仏教説話三二編を収めたもの。下巻に女性が主人公の説話が多いのが特色鴨長明の「発心集」を強く意識し、西行の「撰集抄」に影響を与えている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「閑居友」の意味・わかりやすい解説

閑居友 (かんきょのとも)

鎌倉時代の説話集。慶政上人(けいせいしようにん)著。上下2巻,全32話。慶政上人(1189-1268)は1217年(建保5)渡宋し,帰国後,京都西山に法華山寺を創建している。本書は,入宋前に編述していたが,帰国後,さる高貴の女性の求めに応じて最終的にまとめ,22年(貞応1)西山の草庵において完成した。上巻21話は僧侶を中心とした発心(ほつしん)談,下巻11話は女性を中心とした往生談を主とする。先行する説話集や往生伝などを参考にしており,とくに《発心集》にならった跡が顕著であるが,単純な引き写しを避け,話の後に編者の感想文を記し,類例をあげるなど,細やかなくふうをこらしている。〈清水の橋の下の乞食説法の事〉〈恨み深き女生きながら鬼になる事〉など,筋は平凡だが,当時の宗教と現実生活の相関を考えさせる内容を持つ。各話のあとに編者の感想などが加わる方法は,《撰集抄》など,のちの説話集に影響を与えた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「閑居友」の意味・わかりやすい解説

閑居友
かんきょのとも

鎌倉初期の仏教説話集。上下2巻。32話(上巻21、下巻11)を収載。1222年(承久4)成立。著者不明だが、九条良経(よしつね)の長男で入宋(にっそう)経験をもつ慶政上人(けいせいしょうにん)(1189―1268)説が有力。所載説話は、著者自身述べるように、『発心集(ほっしんしゅう)』の編纂(へんさん)上の欠点を訂し、その精神の継承、充実を図る意図をもって、先行説話集にない話材ばかりが集められている。上巻は巻末話を除き、真如(しんにょ)親王や玄賓(げんぴん)ら男性主人公の話、下巻は嫉妬(しっと)のあまり鬼になった女や建礼門院哀話など女性主人公の話で占められる。それらの説話配列には周到な配慮がみられる。本書は、一貴婦人に、発心、遁世(とんせい)、修行のあるべき姿を諭すために編まれたものであるが、同時に、著者自身の道心の指標を示すものでもあった。思想的には『摩訶止観(まかしかん)』など天台教学の影響が強い。また、長大化した説話末評語には随筆文学への萌芽(ほうが)も指摘される。

[木下資一]

『新日本古典文学大系『宝物集・閑居友・比良山古人霊託』(1993・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「閑居友」の意味・わかりやすい解説

閑居友【かんきょのとも】

鎌倉時代の説話集。上巻21話,下巻11話。慶政著。流麗な和文体で,下巻がほとんど女性を主人公とすることからも,《三宝絵詞》のように身分のある女性に献じられたものであろう。内容的には《発心集》の影響が強いが,往生伝との重複を避け,直接作者によって採取されたかと考えられる話を多く含む。不浄観の強調に特徴がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「閑居友」の意味・わかりやすい解説

閑居友
かんきょのとも

鎌倉時代中期の仏教説話集。慶政著。慈円の著ともいう。上下2巻。 32話。承久4 (1222) 年成立。空也,真如親王,建礼門院など,高僧や尼,遁世者の逸話などが多いが,巷談も若干ある。いずれの話にも編者の仏教思想に基づく感想が付されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android