神の依代(よりしろ)として作られた鏡に御正体(みしようたい)としての神像や本地垂迹説による仏像などをあらわしたもので,その形態から鏡面に毛彫,線刻,描画したものを鏡像とよび,鏡面や鏡地板に別製の薄肉または厚肉の神像や仏像をとりつけたものを懸仏と呼んでいる。平安時代の御正体の主流は鏡像で,その在銘最古のものとして永延2年(988)銘の線刻阿弥陀五尊鏡像(重文)がある。平安時代後期ごろより薄肉の仏像をとりつけた懸仏が出現し,初期の代表例としては中尊寺円乗院(岩手県)の金銅釈迦如来懸仏(重文)や,最古在銘遺品として保元1年(1156)の銘がある宮嶋神社(島根県)の比丘形懸仏がある。懸仏には釣環装置を施し,鏡板は当初は銅鏡そのものであったが,のちには薄手の銅板となり,やがては木製の板の上に鍛造の薄銅板をはりつけたものに変化していく。また神・仏像も,銅板を押圧して造ったものや,より立体的なものは鋳造仏や木造仏などがとりつけられ,南北朝から室町時代になると前机や瓶,瓶華,天蓋などの荘厳具まで立体的にあらわされるようになる。懸仏のつり金具の鐶座も花先形のものから,室町時代には獅嚙形の鐶座へと変化していく。また室町時代には扇面形の懸仏も造られている。
執筆者:木下 密運
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…技法的には,鋳銅製の鏡面に蹴彫(けりぼり),毛彫,あるいは針書きなどの細い線で図像を表したものが多く,なかには墨書のものもある。鎌倉以降になると必ずしも鏡を用いず,円盤状の銅板に磨きをかけ,表面に線刻を施したものも作られ,これはやがて立体的な打出仏や,鋳造仏を銅板や木の板に取り付けた懸仏(かけぼとけ)へと発展してゆく。描かれた図像としては,金山彦神,水分(みくまり)神,天照大神などの神像を表した神影鏡と呼ばれるもの,十一面観音,蔵王権現,大日如来,釈迦三尊,薬師三尊,地蔵菩薩などの仏像を表したもの,大日,薬師,阿弥陀などを表す梵字を墨書,朱書,あるいは金泥書したものに大別される。…
…鏡像とか本地仏御正体と呼び,遺品は12世紀ごろから伝わっている。また,鏡面の線刻にとどまらず,レリーフのように半肉彫の仏像をはりつけた鏡もあらわれ,懸仏(かけぼとけ)と呼ばれる。このほか,前代以来の俗体神像が線刻された鏡像もあり,垂迹神の図像も本地仏と同様に鏡に表現された。…
※「懸け仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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