成ない(読み)ならない

精選版 日本国語大辞典 「成ない」の意味・読み・例文・類語

なら【成】 ない

① (多く、動詞連用形に助詞「て(は)」の付いたものを受けて) 禁止されるべきこと、許容されないことを表わす。(…しては)いけない。
※雑兵物語(1683頃)下「べらぼうづらをしてはならないぞ」
② (「なくては」「なければ」「ねば」など、打消の意の条件句を受けて) 不履行が許されない意を表わす。
(イ) 実行の義務・責任または必要がある。(…しないと)だめだ。
洒落本・妓者呼子鳥(1777)一「十日迄に二十両ないとならねい事があるが」
(ロ) 論理上当然の帰結であることを表わす。…のはずだ。
滑稽本・七偏人(1857‐63)初「衣類(きもの)つまが濡て居なけりゃアならねへはずだが」
③ (多く自発の意の動詞・助動詞および感情を表わす形容詞に「て」の付いたもの、また形容動詞の連用形に付いて) その心的・肉体的状態が、自ら押さえられないほどであることを表わす。…でがまんができない。…でしかたがない。むやみに…だ。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「夜がな夜一夜(よっぴてへ)騒々しくてならねへよ」
[補注](1)動詞「なる」には、もと、成立する、できる、許される(差し支えない)などの意がある。
(2)「なる」を打ち消した言い方として、「ない」系列の「ならない」(「ならねえ」)のほか、「ぬ」系列の「ならぬ」「ならん」がある。①の禁止の「て(は)ならない」については、決意表現として「てはならじ」、反語的表現として「てなるものか」などがある。また、①②の「ならない」は、「いけない」「いかない」などに代えられる。
(3)丁寧な表現の場合は「なりません(なりませぬ)」となる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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