戦時標準船(読み)せんじひょうじゅんせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦時標準船」の意味・わかりやすい解説

戦時標準船
せんじひょうじゅんせん

戦時下における海上輸送増大および喪失船に対処して船腹量の確保を図るため、政府が造船業を国家管理下に置き、船種・船型・性能等を統一して建造した船舶無制限潜水艦戦が開始された第一次世界大戦でイギリスが実施し、第二次大戦では米・英・日三国で大規模な建造が行われた。有名なのはアメリカのリバティー型貨物船で、大戦中2716隻が建造され、ピーク時にはカイザー造船所が1隻を80時間30分で進水させる記録をつくっている。アメリカはこのほかビクトリー型など6000隻近い戦標船を建造した。日本では1941年(昭和16)12月、産業設備営団が設立されて戦時標準型船の一括注文をすることになり、海軍艦政本部が設計した貨物船6種(A~F型)、鉱石船1種(K)、油槽船3種(TLTMTS)合計10種の第一次戦標船が造船統制会を通じて業者に割り当てられた。戦局激化とともに43年、船腹補充のため第二次戦標船が採用され、貨物船3種、油槽船3種が改型船として建造されたが、性能を犠牲にし工事の簡素化を至上目的としたため故障が続発、運航上困難が多かった。44年には第三次戦標船(貨物船4種、油槽船3種)が決定、さらに戦争末期には第四次が設計されたが、実施をみなかった。戦標船として建造されたのは合計12種、1036隻、263万6150総トンで、最多建造型は第二次の2E型貨物船の431隻である。しかしその大部分は主としてアメリカ潜水艦による魚雷攻撃で失われた。戦後経済安定本部調査では、戦標船を含む船舶の損害率は80.6%に達し、太平洋戦争による国富被害の筆頭比率を示している。

前田哲男

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「戦時標準船」の意味・わかりやすい解説

戦時標準船
せんじひょうじゅんせん
wartime standard vessel

総動員下の戦争を遂行するにあたって,安価に短期間で量産できるように,規格を統一して計画的に造られる輸送用船舶のこと。戦標船と略称される。日本では第2次世界大戦に際して,1942年に造船業の監督行政が逓信省から海軍省に移管されるとともに,計画造船のもとに船種ごとに戦時標準船型が定められた。アメリカが同大戦中に大量建造し,戦後"Moth Ball"の愛称でハドソン川河口に大量に係船し,海外援助にも活用されたリバティー型,ビクトリー型標準船は有名である。リバティー船は全溶接の構造であり,この溶接技術の開発が戦後の巨大船出現の基礎となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「戦時標準船」の意味・わかりやすい解説

戦時標準船 (せんじひょうじゅんせん)

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世界大百科事典(旧版)内の戦時標準船の言及

【標準船】より

…しかし,標準化や量産化に対する適不適は,船の場合にも本質的に相違があるわけではなく,同じ型に対する需要隻数の多少と,標準化してつくったとき,1隻ごとにつくった場合に比べてどのくらい建造コストが下がるかという二つの面から決まってくる。したがって,例えば戦時のように一時に非常に大量の船が求められれば,第2次世界大戦中の日本の第1次,第2次および第3次標準船やアメリカのリバティ船,これを改良したビクトリー船などのように戦時標準船が多数建造されることもありうる。前者の日本の標準船は兵員や軍需物資を輸送するための船を短期間に大量に建造する必要から船型を数種類に標準化してつくった船で,低仕様船の代名詞のようになっていた。…

※「戦時標準船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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