扁平脛骨(読み)へんぺいけいこつ

改訂新版 世界大百科事典 「扁平脛骨」の意味・わかりやすい解説

扁平脛骨 (へんぺいけいこつ)
platycnemic tibia

骨幹部が,内外側に薄く,前後に幅広く,扁平になった脛骨。一般に,後期旧石器人に多く見られ,骨幹部の断面は,現代人のような正三角形ではなく,菱形や変形三角形のことが多い。日本人では,縄文人とアイヌに顕著なことから,小金井良精(よしきよ)の〈石器時代人アイヌ説〉の根拠とされた。前後方向に幅広いのは,下腿に加わる前後方向の曲げ荷重に対する適応であると解釈されている。骨幹上部の栄養孔における横径(内外側径)と矢状径(前後径)との比(%)を脛示数(脛骨扁平示数)とし,示数が小さいほど扁平性が高い。クフ(Khuff)の分類によると,64.9以下は扁平脛,65.0~69.9は中脛,70.0以上は広脛と分類される。また,マヌブリエとベルノー(Manouvrier & Verneau)の分類によれば,54.9以下は超扁平脛,55.0~62.9は扁平脛,63.0~69.9は中脛,70.0以上は広脛となる。同様に,骨体中央部における横径と最大矢状径との比を脛骨横断示数とすることがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「扁平脛骨」の意味・わかりやすい解説

扁平脛骨
へんぺいけいこつ

ヒトの脛骨で骨体が前後に長く扁平なものをさす。骨体中央部の左右 (横) 径と,前後 (矢状) 径との百分率 (脛骨扁平示数) をとり,扁平の度合いを表わす。この特徴末期ネアンデルタール人類に現れはじめ,後期旧石器時代から新石器時代新人類に最もよくみられ,逆に現代人になるとほとんどみられない。日本の場合,縄文時代人に顕著であり,脛骨扁平示数は約 60~70 (現代人は約 70~80) である。

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