小金井良精(読み)コガネイヨシキヨ

デジタル大辞泉 「小金井良精」の意味・読み・例文・類語

こがねい‐よしきよ〔こがねゐ‐〕【小金井良精】

[1859~1944]解剖学者・人類学者。新潟の生まれ。東大教授。日本石器時代人やアイヌ人の骨格を研究、また近代解剖学の分野を開拓した。

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精選版 日本国語大辞典 「小金井良精」の意味・読み・例文・類語

こがねい‐よしきよ【小金井良精】

  1. 人類学者。医学博士。新潟県出身。東京帝大医学部卒。同大学の解剖学担当教授。日本の石器時代人やアイヌの人骨の研究を行ない、人類学、近代解剖学の分野を開拓した。帝国学士院会員。妻は森鴎外の妹喜美子。安政五~昭和一九年(一八五八‐一九四四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小金井良精」の意味・わかりやすい解説

小金井良精
こがねいよしきよ
(1858―1944)

解剖学者、人類学者。越後(えちご)(新潟県)長岡藩小金井良達(よしみち)と幸(ゆき)との間に生まれる。大学南校を経て1880年(明治13)に東京大学医学部を卒業、それより4年半、ドイツに留学して解剖学、組織学を学んだ。帰国後、日本人としては初代の東京大学解剖学教授となり、1893年に日本解剖学会を創設して、解剖学の発展に尽くした。

 人類学の分野では、主として縄文時代人およびアイヌの骨学的研究を行った。縄文人は日本の先住民であり、アイヌはその子孫であるという、いわゆるアイヌ先住民説を唱えたが、縄文人やアイヌは他のいかなる人種とも異なるとして、人種孤島説に到達した。日本人類学会の創設者坪井正五郎は、当時、縄文人がアイヌの伝説に登場するコロポックルであったと主張していたが、小金井は人骨の実証的研究によって、坪井説の誤りを証明した。現在、アイヌ先住民説は、多少の修正を要するものの、大筋においては正しいと考えられている。妻は森鴎外の妹で翻訳家、小説家、歌人の小金井喜美子

埴原和郎 2018年11月19日]

『星新一著『祖父・小金井良精の記』(1974・河出書房新社/河出文庫、上下)』

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20世紀日本人名事典 「小金井良精」の解説

小金井 良精
コガネイ ヨシキヨ

明治〜昭和期の解剖学者,人類学者 東京帝大名誉教授



生年
安政5年12月14日(1859年)

没年
昭和19(1944)年10月16日

出生地
越後国長岡(新潟県長岡市)

旧姓(旧名)
小金井 栄精

別名
幼名=銓之助

学歴〔年〕
第一大学医学校(現・東京大学医学部)〔明治13年〕卒

学位〔年〕
医学博士

経歴
明治2年上京、第一大学医学校で学び首席で卒業。13年ドイツ留学、18年帰国、19年帝大医科大教授となり日本人で初めて解剖学講座担当。21〜22年北海道でアイヌの生体調査に従事、26年日本解剖学会を創設、同年から29年まで東京帝大医科大学長をつとめ、大正10年定年退官、名誉教授となる。以後も学術研究会会員として活躍。この間、「アイヌ族の研究」「日本の石器時代の人骨」などを発表して、日本石器時代人アイヌ説を唱えた。著書は他に論文集「人類学研究」などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「小金井良精」の意味・わかりやすい解説

小金井良精 (こがねいよしきよ)
生没年:1858-1944(安政5-昭和19)

解剖学者,人類学者。新潟県長岡出身。1880年東京大学医学部を卒業。ドイツに留学し,86年東京大学医学部解剖学教授となる。留学中は感覚器の組織学を専攻したが,帰国後は骨学,人類学を専攻。88年と89年の夏,北海道を旅行し,アイヌの生体計測と骨格資料の収集を行った。その成果は,93-94年に《東京帝国大学医学部紀要》第2冊第1,2編に独文で発表され,人類学における古典的文献のひとつとなっている。このアイヌ研究を基礎として,当時有力であった,日本石器時代人=コロボックル説を鋭く批判し,日本石器時代人=アイヌ説を唱道した。主要な論文はすべて独文で発表されたが,和文の著書に《日本石器時代住民》(1904)がある。和文論文のほとんどは,《人類学研究》(1926)と《人類学研究続篇》(1958)に再録されている。縄文時代人における風習的抜歯の発見や,齲歯(うし)(虫歯)の統計的研究でも知られている。なお夫人喜美子は,作家森鷗外の妹で,歌人,翻訳家として名を残した。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小金井良精」の意味・わかりやすい解説

小金井良精
こがねいよしきよ

[生]安政5(1858).12. 越後,長岡
[没]1944.10.16. 東京
解剖学者,人類学者。日本帝国学士院会員,東京大学名誉教授。東京医学校卒業後ドイツに留学 (1880) ,ストラスブールおよびベルリン大学において H.ワルダイエル教授に解剖学および組織学を学ぶ。帰国 (85) 後,母校の解剖学教授となり,日本解剖学会を創立 (93) 。 1888年からアイヌの骨格研究に取組み,日本石器時代人はアイヌ人であったとした。主論文『アイヌの自然人類学的研究』 (93,94) ,著書『日本石器時代住民』 (1904) ,論文集『人類学研究』 (26) ,『人類学研究続篇』 (58) 。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小金井良精」の解説

小金井良精 こがねい-よしきよ

1859*-1944 明治-昭和時代前期の解剖学者,人類学者。
安政5年12月14日生まれ。森鴎外(おうがい)の妹喜美子の夫。星新一の祖父。ドイツに留学後,明治19年帝国大学で日本人初の解剖学教授となる。また人類学を研究し,日本石器時代人はアイヌであると主張。縄文人の抜歯の風習も指摘した。昭和19年10月16日死去。87歳。越後(えちご)(新潟県)出身。東京大学卒。

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百科事典マイペディア 「小金井良精」の意味・わかりやすい解説

小金井良精【こがねいよしきよ】

解剖学者,人類学者。新潟県長岡に生まれる。東大医科卒後ドイツへ留学。解剖学・組織学を学び,帰国後東大で日本人として初めて解剖学の本科の講義をもつ。アイヌの骨格の研究から人類学を追究,日本古代人とアイヌを結ぶ説を唱える。著書《人類学研究》。
→関連項目コロボックル

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367日誕生日大事典 「小金井良精」の解説

小金井 良精 (こがねい よしきよ)

生年月日:1859年12月14日
明治時代-昭和時代の解剖学者;人類学者。帝国大学医科大学教授
1944年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の小金井良精の言及

【アイヌ】より

…これはアイヌがホモ・サピエンスの原型に近い形態特徴を保持しており,人種分化の過程をあまり経ていないことを意味するのであろう。 北海道アイヌの骨格を最初に詳しく調査し,アイヌと本州縄文人とが互いに著しく類似することを発見した小金井良精は,アイヌが日本の縄文時代の先住民であり,のちに海外から渡来した日本人によって北へ追われたのであろうと考えた。しかし小金井に続いて日本各地の古人骨資料をさらに数多く調査した長谷部言人,清野謙次らは,アイヌばかりでなく日本人もまた,基本的には縄文時代人に由来したものであることを明らかにした。…

【コロボックル】より

…すなわち人類学者坪井正五郎は1887年,石器時代の日本列島に住んでいたのは,このコロボックルであると発表し,さらに彼らはエスキモーに近い人種であったが,アイヌに追われて姿を消したと説いた。当時の学会では日本の石器時代人はアイヌであるとする,P.F.vonシーボルト以来の学説が主流を構成しており,この説に立つ白井光太郎,鳥居竜蔵,小金井良精らと坪井との間で,はげしい論争が展開された。〈コロボックル論争〉あるいは〈アイヌ・コロボックル論争〉と呼ばれるこの論戦は,アイヌ説の圧倒的な優勢の中で,1913年坪井の急逝のため,最終的な結論を得ぬまま中断された。…

【縄文文化】より


[縄文人]
 坪井正五郎はアイヌ神謡に登場するコロボックル(フキの下の小人を意味する)こそが縄文文化の担い手であり,やがて北方に追放されてしまったとする。小金井良精は,縄文時代にはアイヌが先住していたが,移住者によって北海道に押しこめられたというアイヌ先縄文説を唱えた。清野謙次は,アイヌと現代日本人の共通の祖先が長い混血の歴史を経て形質上の変化を遂げてきたとする原日本人説を示した。…

※「小金井良精」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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