押板(読み)オシイタ

デジタル大辞泉 「押板」の意味・読み・例文・類語

おし‐いた【押(し)板】

物の押しにする板。また、押すときに用いる板。
中世座敷飾りで、壁下に作り付け奥行きの浅い厚板。現在の床の間前身
書物すずりなどを置く台にする、作り付けでない板。

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精選版 日本国語大辞典 「押板」の意味・読み・例文・類語

おし‐いた【押板】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物を押すために用いる板。衣服・食物の水分を絞り出す時などに用いる。
    1. [初出の実例]「次ぎに、おし板を載せて水をしぼり」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉六)
  3. 軸をかけ、三具足などを並べるために、厚い板を畳の上に取りつけた床。また、その板。古くは書院の床の間に用い、現在の床の間の前身をなす。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. 押板<b>②</b>〈酒飯論絵詞〉
      押板〈酒飯論絵詞〉
    2. [初出の実例]「おしいたに三幅一対五幅一ついかかる時は、かならず三具足をくべし」(出典:君台観左右帳記(1511))
  4. 書物、硯(すずり)などを載せるための台として、室内に、つくりつけにしないで置いた板。
    1. [初出の実例]「このおしいたには〈略〉数の草子をつみたれども」(出典:曾我物語(南北朝頃)一〇)
  5. 自由戸(じゆうど)などの戸を押すとき手をかける場所に、取手のかわりに取り付ける小さな板。プッシュプレート。ハンドプレート。
  6. 鍵盤楽器鍵盤
    1. [初出の実例]「小形の古洋琴(ふるぴやの)が据ゑて有ッた〈略〉乾(ひ)ぞりのした蓋を開けて圧板(オシイタ)を突いて見ると」(出典:めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「押板」の意味・わかりやすい解説

押板
おしいた

厚い板の意で転じて床 (とこ) と同様の場所をさす。近世の床の起源と考えられ,床より奥行が浅くかまちが高い位置に設けられる。慕帰絵の文明 14 (1482) 年に補われた部分にはつくり付けの押板が描かれており,13~14世紀に流行した軸装宋元画を鑑賞するためにつくられたとされる。

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世界大百科事典(旧版)内の押板の言及

【住居】より

…このような鎌倉時代の武家住宅をさらに変貌させていったのは,僧侶の住いの影響である。当時の僧侶の多くは,寺院の中で個別の住房を構えて修行を行っていたが,書見のために棚板のついた出窓(附書院)を設けたり,仏画をまつるため壁面の前に飾棚を固定した装置(押板(おしいた))を設けることが一般化していった。これらの変化は14世紀から15世紀にかけて進んでいったが,やがて,それが武家住宅にも採り入れられるようになる。…

【禅宗美術】より

…従来の寝殿造は書院造となり,浄土を再現した回遊庭園は自然を象徴した観念的小庭園へと凝縮する。生活空間としては床の間(室町時代には押板と呼称),書院,飾棚が成立し,石庭へとつながっていく。それらは高度の精神的鑑賞空間であり,水墨画,詩画軸,墨跡(禅僧の書)は床の間で,詩文の創作享受は書院で,唐物の賞玩は飾棚で,そして自然との対話は枯山水との間で行われた。…

【床の間】より

…第2次大戦以後,床の間は日本住宅の封建的な構成を象徴するものとして,また生活上不合理な空間として糾弾を受けるが,畳敷きの部屋の空間秩序を保つうえで欠くことのできない性格のものであり,形式的には自由な創意を加えられながら,座敷飾の中心的な地位を保っている。 歴史的には,床の間の起源は室町時代の上層階級の住宅に設けられた押板(おしいた)にあると考えられている。室町時代には中国宋から輸入した美術品で室内を飾り立てることが流行し,漆器や磁器を飾るための違棚や漢籍を飾る書院,軸装の書画を飾る押板が座敷回りに造り付けられるようになった。…

※「押板」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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