日本大百科全書(ニッポニカ) 「挿頭華」の意味・わかりやすい解説
挿頭華
かざし
冠に挿す造花。元来髪挿しの意で、髪に挿す飾りの花。古墳時代には髻華(うず)とも称した。飛鳥(あすか)時代になると髪に挿すばかりではなく、冠に金属製の造花や鳥の尾、豹(ひょう)の尾を挿して飾りとしたが、平安時代より、冠に挿す季節の花の折り枝や造花を挿頭華とよぶようになった。造花には絹糸でつくった糸花のほか金や銀製のものがあった。その挿し方は、冠の巾子(こじ)の根元につけられている上緒(あげお)に挿すが、官位、儀式により用いる花の種類が相違し、大嘗会(だいじょうえ)には天皇菊花、親王紅梅、大臣藤花、納言(なごん)桜花、参議山吹と決められた。祭りの使(つかい)および列見(れっけん)(朝廷で2月11日に六位以下の官吏を位階昇進の手続のため閲見、点呼する儀式)などの行事に参列する大臣以下も同じで、非参議以下はその時の花を用いる。定考(こうじょう)(8月11日に六位以下の官吏の勤務成績による加階昇任を定める儀式)のときは、大臣白菊、納言黄菊、参議竜胆(りんどう)、非参議以下はその時の花を用いる。踏歌節会(とうかのせちえ)に限って綿でつくった花を用いる。臨時祭のときは藤花、舞人は桜花とされた。挿頭華は行事のときに禁中から下賜されるのが例であるが、神社に行幸、御幸、行啓のときは社頭で下賜されることとなっている。『栄花物語』「御賀」に「かざしの花ども黄金、銀の菊の花を造りて」とある。『紫式部日記絵巻』に、祭りの使が冠に藤を、舞人や陪従が巻纓(けんえい)の冠に緌(おいかけ)をかけ桜を挿した姿をみることができる。
[高田倭男]