擂鉢(読み)すりばち

改訂新版 世界大百科事典 「擂鉢」の意味・わかりやすい解説

擂鉢 (すりばち)

すりこ木との組合せで,食品の磨砕などに用いる調理具。口の大きな漏斗状の陶器で,内壁にこまかい縦の刻み目(おろし目)を一面に施し,中に食品を入れ,すりこ木を回転させて刻み目の上ですりつぶす。すりこ鉢,カガツともいい〈擂盆(らいばん)〉などとも呼ぶ。すりこ木はすり木とも呼び,〈磨粉木〉〈摺粉木〉〈擂槌〉などとも書く。〈擂槌〉の語は中国宋代に見られ,日本では《山槐記》治承3年(1179)1月6日条に〈摩粉木〉と見えるが,すり鉢,すりこ木の名が頻繁に見られるようになるのは室町後期のことになる。すり鉢以前の食品磨砕具としては石臼石皿が,石杵,磨石(すりいし)などとともに用いられた。しかし日本ですり鉢の直接の母体となったのは,古墳時代中期に朝鮮半島から技術がもたらされた須恵器である。陶邑(すえむら)(大阪府)や猿投(さなげ)窯(愛知県)で6世紀に現れるすり鉢は,上にやや開く円筒状で,底が厚く張り出している。この形状は,11世紀まで続いて作られ,その後,口の開いた現在のような大平鉢の形となる。しかし,この段階までおろし目がなく,厳密にはすり鉢というより,こね鉢と呼ぶべきかもしれない。やがて鎌倉時代に至って,備前焼のすり鉢に初めておろし目が施される。初期には縦に3~4本の粗い櫛目を内面の5~6ヵ所に刻むだけであったが,室町時代半ばになって目が密になり,また内面底部にも施されるようになる。現在のように全面に細かなおろし目を入れるようになるのは,17世紀に至ってからである。すり鉢の使用が普及したと思われる室町後期,符節を合わせるように,魚貝のすり身を用いるかまぼこなどの料理が出現するのも故なしとしないようである。
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