調整や使用によって平滑になった面をもつ扁平な磨製石器。石臼との区別はあいまいである。磨石(すりいし)や石杵などを用い,粒状もしくは塊状の物質をたたいたり,押しつぶしたり,磨ったりして粉状にする道具。使用の対象になった物質は,穀物や木の実などの植物質食料のほか,動物の肉や脂肪,酸化鉄や辰砂などの鉱物質顔料と多様である。形態では,縁がなく扁平で前後の高い鞍形石皿(サドル・カーンsaddle quern),中央が浅くくぼんだり縁のある石皿,中央のくぼみが深い乳鉢形石皿(ストーン・モルタルstone mortar)との3種類に大別できる。ただし,モルタルは石臼と訳すことが多い。中近東では,旧石器時代にさかのぼるとする報告もあるが,中石器時代ナトゥフ文化で乳鉢形石皿が一般化し,鞍形石皿と中央の浅くくぼむ石皿はやや遅れて出現する。新大陸では乳鉢形石皿が主で,古期の段階で出現する。一方,中国では早期新石器時代の裴李崗(はいりこう)文化,磁山文化期には四脚付きの扁平な石皿が特徴的で,仰韶文化期になると脚の付かない鞍形石皿が一般的になり,仰韶文化期後期ごろ乳鉢形石皿が出現する。日本では石皿は縄文時代に普遍的な石器であり,早・前期は中央をくぼめただけの石皿が多く,中期になると楕円形で注口のつくもの,後期には四角形で回りに縁をとる石皿や有脚の石皿が出現する。しかし,弥生時代になると,粒食である米の伝播と,脱穀用の木製臼・杵の普及によって石皿は激減する。
執筆者:泉 拓良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
安山岩や石英粗面岩など表面の粗い扁平(へんぺい)な大形礫(れき)の中央部に凹状のくぼみをつけた石器。平面形が楕円(だえん)で皿状であるところから命名された。縄文時代に特徴的な石器である。早期の石皿は扁平で中央がややくぼんだ小形のものが多い。中期になると平面形が整い縁の一端が開口するものが出現する。後期、晩期では脚付きや中央にまな板状の台が付属する例がみられる。用途は、磨石(すりいし)とセットになって植物性食料(堅果類など)を破砕、粉化するのに使用された調理用具と考えられる。また、中央の凹部に酸化鉄が付着している例もあり、調理以外の用途に使用されていた可能性も考えられる。分布は東日本に多く、とくに縄文中期に著しい。
[戸沢充則]
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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