石皿(読み)イシザラ(その他表記)stone quern

デジタル大辞泉 「石皿」の意味・読み・例文・類語

いし‐ざら【石皿】

皿形の石器安山岩などでつくり、長さ20~40センチの円形・楕円形のものが多い。木の実や穀物などをすりつぶすのに使った。日本では縄文時代に多くみられる。
江戸時代、街道茶屋で煮しめを盛るのに用いられた磁器製の安物の皿。

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精選版 日本国語大辞典 「石皿」の意味・読み・例文・類語

いし‐ざら【石皿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 縄文時代に用いられた石器の一つ。安山岩、花崗(かこう)岩などを長方形または楕円形の扁平な形にして、中央を皿状にくぼめたもの。物をすりつぶしたり、ひいたりするのに用いたとされる。
  3. 江戸時代、街道茶屋などで煮しめを盛るのに用いた磁器製の安物の皿。主に濃尾地方産を用いた。また、磁器を石焼きということから、磁製の皿の通称とする場合もある。
    1. [初出の実例]「丸盆にふたつ盃、石皿(イシサラ)に小鮹魚(するめ)さき入て」(出典:浮世草子好色二代男(1684)四)

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改訂新版 世界大百科事典 「石皿」の意味・わかりやすい解説

石皿 (いしざら)
stone quern

調整や使用によって平滑になった面をもつ扁平な磨製石器石臼との区別はあいまいである。磨石(すりいし)や石杵などを用い,粒状もしくは塊状の物質をたたいたり,押しつぶしたり,磨ったりして粉状にする道具。使用の対象になった物質は,穀物や木の実などの植物質食料のほか,動物の肉や脂肪,酸化鉄や辰砂などの鉱物質顔料と多様である。形態では,縁がなく扁平で前後の高い鞍形石皿(サドル・カーンsaddle quern),中央が浅くくぼんだり縁のある石皿,中央のくぼみが深い乳鉢形石皿(ストーン・モルタルstone mortar)との3種類に大別できる。ただし,モルタルは石臼と訳すことが多い。中近東では,旧石器時代にさかのぼるとする報告もあるが,中石器時代ナトゥフ文化で乳鉢形石皿が一般化し,鞍形石皿と中央の浅くくぼむ石皿はやや遅れて出現する。新大陸では乳鉢形石皿が主で,古期の段階で出現する。一方,中国では早期新石器時代裴李崗(はいりこう)文化,磁山文化期には四脚付きの扁平な石皿が特徴的で,仰韶文化期になると脚の付かない鞍形石皿が一般的になり,仰韶文化期後期ごろ乳鉢形石皿が出現する。日本では石皿は縄文時代に普遍的な石器であり,早・前期は中央をくぼめただけの石皿が多く,中期になると楕円形で注口のつくもの,後期には四角形で回りに縁をとる石皿や有脚の石皿が出現する。しかし,弥生時代になると,粒食である米の伝播と,脱穀用の木製臼・杵の普及によって石皿は激減する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石皿」の意味・わかりやすい解説

石皿
いしざら

調理具の一つで,おもに穀物や木の実などをすりつぶすのに用いられた。中央部がすり減ってへこんでいるので,日本では石皿と呼称している。その使用は古く,西アジア,北アフリカなどでは旧石器時代までさかのぼり,新石器時代になると農耕民や狩猟採集民たちの間で広く使われた。石皿の発達した形態である鞍形石臼 saddle quernは,ムギの製粉具として,ユーラシア大陸西部で広く長く用いられている。日本では縄文時代に木の実や根茎類を砕いたり,粉末にするのに用いられ,平面が楕円形を呈するものが多く,すり石とともに使われた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石皿」の意味・わかりやすい解説

石皿
いしざら

安山岩や石英粗面岩など表面の粗い扁平(へんぺい)な大形礫(れき)の中央部に凹状のくぼみをつけた石器。平面形が楕円(だえん)で皿状であるところから命名された。縄文時代に特徴的な石器である。早期の石皿は扁平で中央がややくぼんだ小形のものが多い。中期になると平面形が整い縁の一端が開口するものが出現する。後期、晩期では脚付きや中央にまな板状の台が付属する例がみられる。用途は、磨石(すりいし)とセットになって植物性食料(堅果類など)を破砕、粉化するのに使用された調理用具と考えられる。また、中央の凹部に酸化鉄が付着している例もあり、調理以外の用途に使用されていた可能性も考えられる。分布は東日本に多く、とくに縄文中期に著しい。

[戸沢充則]


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旺文社日本史事典 三訂版 「石皿」の解説

石皿
いしざら

平たい大きな石に皿のようにくぼみをつけた石器
その上に木の実や根茎類などをのせ,他の硬い石ですりつぶすなど,調理に使ったものと思われる。縄文時代全期を通じてみられ,時代が下るにしたがって,へりを彫刻で飾ったものなど,手のこんだものが出てくる。

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