擦過傷(読み)サッカショウ(その他表記)Abrasion

デジタル大辞泉 「擦過傷」の意味・読み・例文・類語

さっか‐しょう〔サツクワシヤウ〕【擦過傷】

皮膚が物とすれ合ってできたきず。すりきず。かすりきず。
[類語]擦り傷擦りむく

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精選版 日本国語大辞典 「擦過傷」の意味・読み・例文・類語

さっか‐しょうサックヮシャウ【擦過傷】

  1. 〘 名詞 〙 摩擦によって皮膚の表皮が局部的にはがれた創傷。表皮剥脱。すりきず。
    1. [初出の実例]「そしてまた膝頭に、少し許りの擦過傷(サックヮシャウ)をうけた」(出典:駒のいななき(1916)〈巖谷小波〉七)

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六訂版 家庭医学大全科 「擦過傷」の解説

擦過傷
さっかしょう
Abrasion
(外傷)

どんな外傷か

 すり傷のことを擦過傷といい、皮膚の表面を地面コンクリートなどにこすりつけた際にできる傷を指します。

 「傷」とは皮膚の表皮・真皮内にできたもので、その下の皮下組織や筋肉などまでには達していない状態です(達した状態を特別に「(そう)」という)。したがって、擦過傷による損傷自体は皮膚(表皮・真皮)に限定されます。

 擦過傷は、皮内に土や砂などの異物が入り込むことが多く、結果として病原微生物が増殖し、局所の感染を起こすことがあります。また、知覚神経末端が露出するため、痛みを伴うことも特徴です。

 一般に創傷は、病原微生物が一定の数以下であれば、化膿などの感染症の徴候を認めず、修復のメカニズムがはたらいて治ります。したがって、受傷後は損傷部を水道の流水でよく洗い、病原微生物の数を減らすことが重要になります。基本的に、創面・創内の消毒薬使用は適応がありません。

 処置が不適切であれば、新しい皮膚の再生が起こりにくく、黄色調の感染を伴った痂疲(かひ)(かさぶた)ができます。この痂疲の裏側で病原微生物が増殖した場合、傷の治りが悪くなり、痛みも持続します。

 さらに、皮内に異物が残ったままで皮膚が再生すると、異物自体の色が入れ墨のようになる刺青(しせい)外傷性刺青)として残り、美容的に問題となります。

応急手当

 土や砂などの異物を、水道の流水で可能なかぎり取り除くことを最優先します。これによって異物が除去できた場合で、かつ損傷が小範囲であれば、市販されている創傷用の被覆材(ひふくざい)貼付(ちょうふ)します。

 損傷が広範囲で異物が十分に除去できなければ、感染が長引いたり、美容的な問題もあるため、医療機関への受診が必要です。

医療機関における治療

 異物の完全な除去を目的に、ブラシを用いて洗浄します。そのうえで創傷部辺縁および周囲を消毒し、損傷部の範囲や深さに応じて密着型の被覆材を貼付します。これにより、痛みの緩和、傷跡が残りにくいなどの効果が得られます。

 治ったあとの皮膚は、紫外線の影響で色素沈着を起こしやすいため、数カ月間、紫外線にさらされないようにする必要があります。

 管理については、医師の指示に従ってください。

松田 剛明

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「擦過傷」の意味・わかりやすい解説

擦過傷
さっかしょう
excoriation

皮膚とほぼ平行な外力による皮膚の損傷で、俗に擦り傷といわれる。表皮の剥離(はくり)ではリンパ液が漏出し、真皮層では出血がおこり、これらが固まって痂皮(かひ)(かさぶた)をつくる。転倒やスポーツ、軽い事故など日常生活でおこることが多く、重要臓器損傷を伴うことは少ない。土砂やアスファルトなどの擦過物が創面に圧入されていることがあるので、オキシフルや生理的食塩水で十分洗浄除去し、創面を清潔なガーゼなどで被覆する。1週間から10日間ぐらいで治癒する。表皮の損傷ではほとんど瘢痕(はんこん)(きずあと)を残さないが、真皮に達するものでは瘢痕によるひきつれを生ずることがある。

[荒木京二郎]

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