夏目漱石が1903年(明治36)9月から05年6月まで,東京帝大英文科でおこなった講義を,加筆訂正したもの。07年大倉書店刊。序文で講義のモティーフを,1900年からあしかけ3年にわたるロンドン留学で英文学と悪戦苦闘した体験から語っている。すぐれた語学力をもった日本人漱石が,英文学の了解不可能性という壁に突き当たったとき,この壁は,彼我の文明の発展経過と言葉がながい歴史の中で身につけた“趣味”tasteのちがいによることに気づいた。その歴史のちがいは偶然の要因である。その認識の上に,彼我の偶然の差異を超えた普遍的な文学の本質論を樹立しようとして,〈文学的内容の形式〉を〈F+f〉と定式化し,意識の焦点的印象(F)とそれに伴う感情(f)の多様な組合せを,豊富な実例を用いて展開した。
執筆者:桶谷 秀昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…20歳のときパリ駐在スウェーデン大使スタール・ホルスタイン男爵と結婚し,フランス革命当時は革命の穏和な進行を支持する態度を示した。1800年には,文学を社会的な観点から考察し,またヨーロッパの南方文学と北方文学を対比させた《文学論》を,02年には小説《デルフィーヌ》を出版した。彼女はナポレオンを〈フランス革命の収拾者〉と見て期待をよせた。…
※「文学論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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