改訂新版 世界大百科事典 「文室大市」の意味・わかりやすい解説
文室大市 (ふんやのおおち)
生没年:704-780(慶雲1-宝亀11)
奈良時代の賜姓皇族。長親王の第7子で文室浄三の弟。もと大市王と称し739年(天平11)無位から従四位下となり,のち刑部卿,安積親王の喪事を監護し,元正上皇が没したさい御装束司となり,752年(天平勝宝4)文室真人を賜り,ついで太皇太后藤原宮子が没したおり造山司となる。このころ罪に陥る皇族が多いので,沙門となり身の安全を図ったという。757年(天平宝字1)正四位下,弾正尹,ついで節部(大蔵)卿,761年光明皇太后の周忌御斎に供奉して正四位上となり,民部卿を経て,765年(天平神護1)従三位,766年参議,ついで中務卿。770年(宝亀1)称徳天皇が没したさい御装束司となり正三位に昇る。このおり吉備真備によって皇太子に擁立されようとしたが,固辞したらしい。771年には中納言と見え,同年大納言に任じられ弾正尹を兼ね,また従二位になり治部卿も兼ねた。774年中務卿を兼ねたが,重ねて致仕(ちし)を請うて許され,正二位となる。
執筆者:西山 良平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報