日本大百科全書(ニッポニカ) 「新古典主義音楽」の意味・わかりやすい解説
新古典主義音楽
しんこてんしゅぎおんがく
ワーグナー、マーラー、ブルックナーに代表される後期ロマン主義の主情性、主観性に反対し、バロック的な形式性を重んじた、覚めた客観性、主知性に基づく音楽。ブゾーニの『音芸術の新しい美学提要』(1907)で理論的にまず提唱され、第一次世界大戦後盛んになった。初期の三大バレエ作品以降のストラビンスキーがその代表者で、ペルゴレージの作品やその他のバロック時代の作品を素材として用いた『プルチネッラ』(1919~20)、詩人コクトーとの共同作業『オイディプス王』(1926~27)、ロシア・バレエ団のための『ムーサの神を率いるアポロン』(1927~28)、チャイコフスキーの主題による『妖精(ようせい)の口づけ』(1928)などで、次々と古典的な形式感をもった作品を発表した。同時代のヒンデミット、カセッラ、マリピエロ、プーランク、ミヨー、オネゲル、プロコフィエフらにも同じような傾向がみられる。新古典主義的時代は、ストラビンスキーにとっては第二次大戦後のオペラ『放蕩(ほうとう)息子の帰還』(1948~51)まで続くが、芸術的な活力を保持したのは両大戦間の約20年間であったといってよい。なお、同時代の音楽美学者アドルノは、こうした古典回帰を「幼児的な退行」として批判している。
[細川周平]