旅は道連れ(読み)たびはみちづれ

精選版 日本国語大辞典 「旅は道連れ」の意味・読み・例文・類語

たび【旅】 は 道連(みちづ)

旅行をするには道連れのあるのが何よりも心強く、また、お互いに助け合って行くことが大切である。
俳諧・細少石(1668)冬「風の神や旅は道つれ夜半の雲〈任幸〉」

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ことわざを知る辞典 「旅は道連れ」の解説

旅は道連れ

旅には、同行してくれる道連れがいると心強く、道中が楽しいものとなる。「世は情け」と続けることも多い。

[使用例] 「旅に出てから、こないに打ちくつろいだ晩ははじめてですわ。ほんまに、これほど心のこもった御接待はあらしまへんな。〈略〉旅は道連れ、世は情とはこのことや」[三島由紀夫*絹と明察|1964]

[使用例] 世は情であるかどうかは知らぬが、旅は道づれだとは思う。旅、その道づれ、なんとも大事なこと――ひとはどう見ようとも、旅をする本人にとって切実な問題である。『近代文学』の人びとのことを考えると、この旅の道づれというのに具合いいように思う。〈略〉意見のちがうことがあっても、無理に妥協しなくともいい。しかし喧嘩をしなくともいい[中野重治*『近代文学』の人びと|1964]

[解説] かつては「旅は憂いもの辛いもの」とされ、難儀することも多かったのですが、道連れに恵まれると何かと安心で、話もはずむことになります。旅に出ると初対面でも会話を交わし、気が合えば、「旅は道連れと申しますから」といって同行を申し出たり、申し出に同意することも珍しくありません。ことわざは、詳しい説明をしなくても、しばしば話し手と聞き手の距離を縮め、親しくなるきっかけをあたえてくれます。その背景にあるのは、古くから多くの人々が認めてきたことばの説得力であり、価値観を共有できる安心感でしょう。
 江戸初期には、「旅は道連れ世は情け」の形でよく知られ、後期には「旅は道連れ」だけで江戸いろはかるたに収録され、子どもにも親しまれるようになりました。いまも「世は情け」と続けることが多いのは、ほのぼのとした人情が感じられて共感を呼び、口調もよいせいと思われます。

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