坂口安吾(あんご)の評論。1942年(昭和17)3月『現代文学』に発表。43年12月、同名の単行本を文体社より刊行。太平洋戦争下、超国家主義や伝統が盛んに叫ばれているころ、伝統や国民性に付きまとう形骸(けいがい)や欺瞞(ぎまん)に対して、大胆にも抵抗し、「法隆寺も平等院も焼けてしまつて一向に困らぬ。必要ならば、法隆寺をとり壊して停車場をつくるがいい」「〈やむべからざる実質〉がもとめた所の独自の形態が、美を生むのだ。」といいきった。それは『枯淡の風格を排す』(1935)などから一貫して、淪落(りんらく)に貫かれた世界であり、戦後の『堕落論』や『白痴』への道程を予兆させるものであった。
[伴 悦]
『『筑摩現代文学大系58 坂口安吾集』(1975・筑摩書房)』
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