高村光太郎(こうたろう)の第一詩集。1914年(大正3)10月、抒情詩(じょじょうし)社刊。1910年(明治43)の「失はれたるモナ・リザ」から14年の「秋の祈」までの、詩75編、小曲32編を収める。これらの作品は『スバル』『朱欒(ざんぼあ)』『白樺(しらかば)』『創作』などに発表されたものである。詩集の構成は、作品を年代順に並べた当時においては特異なもので、詩人の内的形成をそのまま示そうとしたものと理解される。すなわち、帰国後、デカダンスの渦に巻き込まれて苦闘した時期の作から、智恵子(ちえこ)に巡り会い、彼女との愛の成就(じょうじゅ)を祈りを込めて歌い上げた作までを並べ、その自己定立の歩みを劇的に展開している。前半部には「根付(ねつけ)の国」や「父の顔」などが収められ、青春の激しい情動と日本風土への屈折した批判に特色があり、後半部には「道程」や「五月の土壌」などがあって、転生の祈念と自然理法への賛嘆に特色がある。
[安藤靖彦]
『『高村光太郎詩集』(岩波文庫・旺文社文庫・新潮文庫)』▽『北川太一著『高村光太郎』(1965・明治書院)』▽『吉本隆明著『高村光太郎 決定版』(1966・春秋社)』
高村光太郎の第1詩集。1914年(大正3)刊。76編から成る。〈《道程》は“泥七宝”の小曲を境にして截然と前後に切れてゐる〉と著者自身のちに回想して言うとおり,前半は大部分が欧米遊学から帰国し,心身ともに反逆,焦燥,退廃の生活に没入していた時期の作である。〈失はれたるモナ・リザ〉〈根付の国〉〈寂寥〉などの怒りと絶望の詩がそこに含まれる。後半は長沼智恵子との恋愛の時期に重なる。〈僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る〉(〈道程〉)と,再生の喜びと決意を歌う。求道者的,倫理的な骨格が太くあらわになってくるこの後半部は,その自己形成力の魅力によって,大正以降の人道主義的思潮の一原型をなした。また平明雄弁な口語体の創出も,口語自由詩の展開に大きな意味をもっていた。
執筆者:大岡 信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…《スバル》は指導者に森鷗外を仰ぎ,石川啄木,吉井勇その他多くの新進詩人,作家,劇作家らを擁した。同じく《スバル》で活躍した高村光太郎は,口語を駆使して書かれた最初の重要な詩集《道程》(1914)を刊行,生命の爆発的燃焼と倫理的な意志にもとづくその理想主義的作風は,大正詩の新たな出発を鮮やかに告げた。一方,白秋門の萩原朔太郎は《月に吠える》(1917)や《青猫》(1923)によって近代人の孤独な自我の内景を表現し,〈“傷める生命”そのもののやるせない絶叫〉とみずからいう世界を言語化した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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