改訂新版 世界大百科事典 「早明浦ダム」の意味・わかりやすい解説
早明浦ダム (さめうらダム)
吉野川上流の高知県土佐郡土佐町に,水資源開発公団によって建設された洪水調節,灌漑,上水道用水,工業用水,発電を目的とした多目的ダム。1973年完成,高さ106m,堤頂長400m,堤体積120万m3の重力ダムで,貯水池の湛水(たんすい)面積7.5km2,総貯水量3.1億m3,有効貯水量2.9億m3。ダムの基礎岩盤が弱かったので,せん断に対して補強するため,ダムの断面形状である基本三角形の上流側に,小さな三角形状の部分(フィレット)を設けて増厚する設計法が開発された。この手法は,その後建設された基礎岩盤の不良な地点での多くの重力ダムの設計法の標準となったものである。75年,76年に計画高水量を上回る大出水が発生し,ダム周辺および下流に甚大な被害を出したので,減勢工の改良および危険区域の家屋の移転がなされた。
執筆者:柴田 功
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