精選版 日本国語大辞典 「かわ」の意味・読み・例文・類語
かわかは
- 〘 接尾語 〙 体言またはこれに準ずる語、特に擬態語について、そのような状態であることを強調していう。「ぎちかわ」「くずかわ」「うじかわ」「ちょびかわ」「とばかわ」など。あまり好ましくない状態についていう。近世上方の語。
- [初出の実例]「ふしぎじゃは・何で喰てゐてぬらりかは」(出典:雑俳・西国船(1702))
かわかは
- 〘 名詞 〙 夫より年上である女房。姉女房。
哺乳(ほにゅう)動物などの皮膚をはぎとったままのものを新鮮皮または生皮といい、保管、輸送しやすいよう、一時的に防腐処理を施したものを原皮(原料皮)という。これらを総称して皮(かわ、ひ)と称する。また、皮を脱毛してなめしたものを革(かわ、かく)といい、皮と革を総称する場合には皮革あるいは天然皮革とよぶ。ただし、脱毛せずになめしたものは、毛皮(けがわ、もうひ)と称している。生皮は多量に水分を含んでいるせいもあって、きわめて腐りやすく、原皮も一部脱水状態にあるものの、長期間放置すると変質しやすい。水分を吸収した状態では、非常に柔らかいが、乾燥すると板のように硬くなり、ふたたび水につけても柔らかくはならない。なめして革にすると、変質、腐敗はほとんどおこらないし、水分の吸収、放出をしても硬軟度の変化がないうえに、耐熱性も向上する。原皮には主として哺乳動物の皮が用いられるが、ほかにダチョウなどの鳥類、ワニ、トカゲ、ヘビなどの爬虫(はちゅう)類、あるいはサメ、サケ、ウナギなど魚類の皮などが、数量的には少ないものの利用されている。
[菅野英二郎]
服や手袋などの柔らかい革、靴の底や鞄(かばん)のように硬い革など、用途に応じて製造されるが、その革の製造工程全般をさして「なめし」ということもある。しかし、一般には革の主成分であるコラーゲンというタンパク質の分子内および分子間を、なめしで橋架け式に結合させ、皮を安定化させる作業をいう。このなめし剤には塩基性クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの塩類、植物タンニン、芳香族スルホン酸とホルマリンとの縮合物からつくる合成なめし剤、各種アルデヒド類、不飽和の油脂類など数多くあるが、このうち多く使われるのはクロム塩と植物タンニンである。革の性質は、動物の種類、なめし剤となめし方法、乾燥と仕上げ方法などによって決まるので、用途、目的にあわせて、これらのなめし剤を単独または数種を組み合わせて、なめしが行われる。
[菅野英二郎]
哺乳類の皮は表皮層と真皮層で構成されており、表皮層は皮全体の厚さの約1%。ケラチンタンパク質が主成分である。真皮層のほうは各種アミノ酸で成り立つコラーゲンが主成分であるが、両層のなかに含まれるコラーゲン以外の成分は、大部分なめしの工程で毛とともに除かれる。コラーゲンは牛の新鮮皮の場合で、タンパク質33%(そのうちコラーゲン29%)、ほかに脂肪2%、水分64%、その他1%である。
真皮層は、毛根、汗腺(かんせん)、皮脂腺、立毛筋(りつもうきん)、動脈、静脈などが存在する銀面層(乳頭層ともいう)、そしてじょうぶな繊維束が交絡している網様層、さらに本体に接する肉面層の3層からできている。網様層の繊維束は1本にみえるが、これも数百本の繊維が集まったもので、この繊維も実は多数のフィブリル(細繊維)からできている。繊維の基本となる分子は、各種のアミノ酸のジグザグに結合したポリペプチドで、これが三重螺旋(らせん)構造を形成している。銀面層の繊維束は網様層の繊維束より細く、空洞が多いので柔軟で感触がよい。銀面層を含み、網様層が薄いほど強さは小さく柔軟である。銀面層と網様層の境界部分は、毛根などによる空洞が多く、もっとも弱い部分といえる。
また動物の種類によっても繊維構造が異なり、同じ動物でも年齢、性別、飼育条件などによって変わってくる。同じ動物では年齢の若いほど繊維が細いので、感触が優れ柔軟性はあるが、強さに欠ける。同様に同じ動物からとる皮でも、その部位により大きく違う。たとえば臀部(でんぶ)(しり、バット)は繊維が太く密に交絡しているので、硬くて堅牢(けんろう)であり、腹部(ベリー)は繊維がやや細く、絡み合いも少ないから柔軟ではあるが、強度は小さい。皮の表面はその動物特有の毛穴などによる起伏があり、美しい模様を呈している。表面を銀面とよぶゆえんである。この銀面層を毛羽立てたヌバックは、網様層を毛羽立てたスエード、ベロアよりも繊維が細いので、感触はよい。
革の繊維構造は、なめしその他の製造工程で若干の変化をおこすが、ほとんど原皮の繊維構造を保っている。しかも革の性質は大部分がその繊維構造によって決まるので、その動物、部位などによって革の性質が少しずつ異なる。
[菅野英二郎]
旧石器時代からはいだままの生皮を衣服などに使用していたことが推定され、そのなめし・加工技術は、残された皮革製品あるいは壁画などから判断される。皮を乾燥すると硬くはなるが、腐敗しにくくなることをみいだしたのが加工の始まりで、紀元前4000年のポットのカバーが発見されている。人が火を使うようになり、発生する煙になめし効果があることを発見し、かなり古くからエスキモー、中国人が利用し、この技術がヨーロッパその他に広がった。エスキモーは食料が不足し、生皮をかんだことから、最古のなめしとされている油なめしを発見した。エジプト時代初期の革は白色であり、ミョウバンでなめしていたことが推定されるが、このなめしはアッシリア、バビロニア、インドなどでも行われ、ギリシアではこの革を使って靴がつくられていたという記録がある。古くからもっとも重要であった植物タンニンなめしは、バビロニア人などの碑文に、カシワの木をなめしに使用するため植林したと書かれていることからも、紀元前数千年より行われていたと思われる。
古代におけるなめし作業を解明する重要な手掛りとして前1450年のエジプトのなめし工場の壁画が発見され、当時の革なめしの状態がよくわかる。8世紀に至り、スペインで有名なコードバン革(スペイン革)のなめしが始まり、靴の甲革、衣料などに使われ、この技術がしだいにヨーロッパ全土に広がった。初期はヒツジ(ヘアーシープ)の皮を植物タンニンとミョウバンでなめした。このように、クロムなめしが普及するまでは、植物タンニン、ミョウバン、油なめしが革なめしの3本の柱となっていた。クロムなめしは1884年に発見され、合成なめし剤も、ほぼ同時代に製造が始まり、ここでなめしが大きく変革しつつ今日に至っている。クロムなめしは、短時間で軽量柔軟な革が得られ、しかも、資源的制約が比較的少ないことなど、時代の要求によく適合していることから、急激に増加した。ただし、最近は公害防止の立場から、クロムにかわるなめし、あるいはその使用量を少なくするなめしの研究が世界的に進められている。合成なめし剤は枯渇しつつあった植物タンニンの代替を目的にして開発されたものである。この目的は成功したとはいえないが、各種化学構造のなめし剤が開発され、他のなめしに少量加え、または併用して、なめし方法の改善、革の品質向上に寄与している。とくに現代のように多様化する品質要求に適合させるために不可欠のものとなっている。革の生産の大部分は、先進国で占められていたが、発展途上国が工業化への第一歩として、革の生産を取り上げているので、その生産は年々途上国に移行しつつある。
日本での皮革の歴史は明らかではないが、紀元前より使用し、その技術は、中国から伝来したものと考えられている。獣肉を食用とする習慣がないことから、革の生産は少なく、その利用も一部に限定されていた。明治に入り、欧米文化が導入されると同時に、軍用としての革の需要が増加し、それに伴い生産が増加した。第二次世界大戦を契機に軍需から民需中心に転換したが、戦後の経済の発展と生活の洋式化により急激に需要が増加、同時に、生産も増加してきた。ただし、ここ数年需要が停滞し、そのため生産が減少の傾向にある。
古来から伝わるなめしとして、牛馬皮を川水に浸(つ)け脱毛し、菜種油を塗ってもんでつくる姫路白なめし革と、鹿皮(しかがわ)の銀面を削り取り脳しょうなどでなめし、いぶして色付けする甲州印伝革とがあるが、明治以降は牛皮を植物タンニンでなめした革が多くなった。戦後はクロムなめしが増え、また使用する動物として子ウシ、ヒツジ、ブタなどが増加している。
[菅野英二郎]
日本は畜産が少なく、自給できるのはブタ原皮くらいのものである。そのため原皮を北アメリカ、オーストラリアなどから大量に輸入している。原皮の調製は、塩浸け、乾燥、あるいは塩を散布して乾燥させる方法などがとられているが、公害問題の解消、および輸出国での付加価値向上などの目的で、製造工程の途中まで原産国で行う方向にある。たとえば脱毛、石灰浸け後、浸酸の状態(ピックルド皮)またはクロムあるいは植物タンニンでなめした状態(ウェットブルー、クラスト)まで行う。
[菅野英二郎]
製造工程を大別すると、コラーゲンの精製(準備工程)、皮を革に変化させる(なめし工程)、そして商品価値をあげるための染色、加脂、仕上げ(仕上げ工程)の3工程となる。
〔1〕準備工程 原皮の塩分、汚物を水洗いで落としながら、同時に吸水させ、ついで肉面の脂肪、肉塊などを除去する。次に石灰と硫化ナトリウムの混合液に浸け、皮を膨潤させて繊維をほぐし、毛を取り除く(石灰浸け、脱毛)。こうしておいて、裏すきまたは数枚に分割して希望の厚さとし、酸やアンモニウムの塩溶液に浸けて石灰を除去(脱灰)、同時にタンパク分解酵素を加えてコラーゲン以外の不要物を消化除去する(ベーチング)。
〔2〕なめし工程 植物タンニンによるなめしは、タンニンを含む植物(カシワ、クリなど)の樹皮、木部、葉などから温水で抽出し、エキス状にしたもの(主として南アフリカ共和国などから輸入している)を水に溶かした液に、準備工程を終えた皮を浸けてなめす。これには通常、数日から数十日かける。たとえば靴の底革のように厚くて堅牢な革をつくるには、タンニンの浸透に時間がかかり、また十分にタンニンを結合させる必要があるため長期間浸ける。クロムなめし法では、初めに酸と食塩の混合液に数時間浸けて皮を弱酸性にしたあと、クロムなめし液に数時間ないし十数時間浸けてなめす。なめし剤は重クロム酸塩をグルコースなどの還元剤で還元して、3価の塩基性クロム塩に調製する。なめしたあと、革の酸性が強すぎるので、弱アルカリ性の塩で中和する。
〔3〕仕上げ工程 なめしを終わった革は、用途に応じて染色し、生油または乳化油で脂肪分を加え、乾燥後革の銀面に仕上げ剤(塗料など)を塗って製品にする。また表面の毛羽立った革(ナップ革)は、乾燥後サンドペーパーなどによって表面をきれいに毛羽立てて製品とする。
[菅野英二郎]
革の種類は、動物の種類・年齢、なめし、乾燥、仕上げ、用途などによって分類されているので、きわめて複雑である。動物では牛皮がもっとも多く使用され、その品質も良好で、年齢順にカーフ、キップ、カウ(牝(めす))またはステア(去勢牡(おす))などに分けられる。豚皮は銀面から肉面に達する3本の毛穴が特徴で、臀部と腹部との柔軟度が著しく異なるが、銀面の対摩耗性は双方とも良好という特質をもつ。羊皮は種類が多く柔軟性はあるものの、強さの面で大きく劣る。一般に、良質な毛をもつ動物ほど、その皮の品質は悪い。山羊(やぎ)皮はカーフ皮と羊皮の中間的な性質で、しかも表面は比較的じょうぶである。成育した山羊革をゴートとよび、子山羊革をキッドとよんでいる。植物タンニンでなめした革は茶褐色で、他のなめし革に比べると堅牢で重い。クロム革は青色で伸びが大きく、弾性もあって比較的軽く、耐熱性も高い。ただし、最近は2種以上のなめし剤を併用したコンビネーションなめし革が増加しつつある。
なお、なめし革には用途に応じて以下のようなものがある。
(1)甲革 靴の甲部表面に使用する革で、成牛のクロム革が多い。高級靴にはキッド、カーフ、ペッカリー(イノシシに似た偶蹄(ぐうてい)類動物)などの革が用いられている。
(2)裏革、中敷革 靴の甲部裏面および中敷には、成牛皮、豚皮、羊皮などを、クロムまたは植物タンニンでなめした革が用いられている。
(3)底革 靴の表底、中底には、成牛皮を植物タンニンでなめした革が用いられるが、しだいにゴム、合成樹脂、ボード(繊維とバインダーでシート状にした材料)などの他の材料によって代替されている。
(4)衣料、手袋革 高級品はカーフ、ゴート、シープなどのクロムまたはコンビネーション革が用いられ、大衆品には成牛、豚革などが用いられる。
(5)ナップ革 銀面を毛羽立てたヌバック革は感触は非常によいが、汚れがつきやすい。網様層を毛羽立てた革にスエードとベロアがあるが、ベロアのほうが毛足が長い。これらの革は衣料など、各種の用途がある。
(6)その他 爬虫類の革は服飾品として珍重される。銀面にエナメル塗料を厚く塗ったエナメル革(パテントレザー)は、靴の甲やハンドバッグなどに使用されるし、鹿皮の銀面を除いて油なめししたセーム革などは、柔軟で吸水性がよいことから、ガラス拭(ふ)き、ガソリン漉(こ)し、手袋材料として古くから利用されている。
[菅野英二郎]
革は水を非常に吸収しやすく、吸収すると体積を増すし、水分を放出すると収縮してしまうので、寸法はつねに不安定である。また、繰り返し重みがかかると面積は増加(永久の伸び)するし、逆に使用中加重のない部分は縮む傾向がある。とくに熱などによって損傷する場合には、同時に収縮を伴う。普通の革は、弱酸性で安定させてあるが、汗の吸収その他によって中性からアルカリ性に変わる。これは革を痛める原因になるので手入れが必要である。水洗いは変形をおこしやすいので、普通はドライクリーニングを行うが、脱脂するのでときには再加脂が必要となる。また、汚れたまま保管するとカビなどに侵されやすいので、よく手入れしてから乾燥した冷暗所で保管すべきである。直射日光に長く当てると変色、変形をおこすことがあるので、できるだけ避けたい。
[菅野英二郎]
靴の中底などに用いるレザーボードは、屑(くず)革などの繊維を取り出し、これをラテックスなどで固めてシート状にしたものである。また、皮のコラーゲンを化学的に溶解し、シート状または糸状にした再生コラーゲンは、可食性ソーセージ・ケーシングに用いられ、将来医療用に用いられるものと期待されている。
[菅野英二郎]
革は世界的に需要が伸び、原皮も不足がちである。そのため代替品の開発も盛んになった。その代表的なものとして、繊維布上にポリウレタン、ポリアミドなどの合成樹脂を塗った合成皮革が、外観では革と区別がしにくいほど進歩した。また、高度な技術を用いた不織布タイプの衣料用スエード、不織布をベースにした靴甲用人工皮革などは、より革の構造に近づき、高級品として売り出されている。
[菅野英二郎]
皮革(レザー)は近年、ファッショナブルな衣料素材として、脚光を浴びている。レザーウエアは、従来ラフでスポーティーなものとされ、デザインも色もごく限られていた。しかしレザー特有の光沢や質感、機能性などが現代感覚にマッチするところから、年ごとにファッション度の高いレザーウエアが登場している。従来のレザーコートやジャンパー、スーツ、ベストに加えて、ジャンプスーツ、ブルゾン、パンツ、ロングスカートなど、官能的な美しさをもった新しいデザインが多い。色も、基本の黒や茶やベージュをはじめ、カラフルで鮮やかな色が自由に染められるようになり、メタリックな感覚のゴールドやシルバーなどもみられる。アクセサリーでは、靴、鞄(かばん)、ハンドバッグ、手袋をはじめ、ネクタイ、ベルト、ボタン、造花、装身具、あるいはトリミングやテーピングなど広範囲に用いられる。とくに1960年代に再登場した革のブーツは、男女ともに世界的な流行となっている。またハンドバッグには多様な革素材が用いられ、クロコダイル(ワニ)、バビラス、アカウミガメ、トカゲ、ジャクルシー、スネーク(ヘビ)、オーストリッチ(ダチョウ)、オーストレッグ、ホースヘアなどが珍重されている。
一方、日本で生まれた人工皮革(アーティフィシャル・レザー)がこのところ目覚ましい発展をみせている。1980年代には、従来のスエードタイプに、新たに表皮タイプ(銀面タイプ)が加わり、衣料やアクセサリー、インテリアなどにも用いられ、世界的な注目を集めている。人工皮革は、皮革を超える皮革といわれ、天然皮革の外面的な特徴はもちろん、通気性、伸縮性などの構造上の特性もあわせもつ。さらに耐水性、軽量性、堅牢(けんろう)性、扱いの容易さなどの優れた特質を備えている。皮革の風合いを保ちながら、微妙なシルエットを自由に表現でき、フリルやギャザーやキルティングなどのテクニックも駆使できる。
[平野裕子]
『菅野英二郎著『皮革の実際知識』(1975・東洋経済新報社)』▽『Thomas C. ThorstensenPractical Leather Technology (1976, Robert E. Krieger Pub. Co., N.Y.)』
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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