時代変化(読み)じだいへんか(その他表記)secular change

改訂新版 世界大百科事典 「時代変化」の意味・わかりやすい解説

時代変化 (じだいへんか)
secular change

ヒト集団の身体特徴が,時間とともに変化する現象遺伝子の変化を伴う進化とは異なる現象である。時代変化の向きは必ずしも一定ではなく,逆転することもある。出生時から成人までの各年齢において身長が高くなる高身長化現象,初潮の早発化や骨成熟の進行が早くなるという発育加速化現象,上から見た脳頭蓋の形がまるくなる短頭化現象などが知られている。近年では肥満の増加が,健康に対する悪影響の観点から社会的問題になっている。寿命も長くなり,加齢の進行も遅くなってきた。

 日本における身長の時代変化は,弥生時代以後,江戸時代末までは低下し,以後は増加に転じている。急速な高身長化,発育加速化は20世紀に世界各地でおこった。北西ヨーロッパ系集団では,10年間に1cm程度の速度で平均身長が高くなった。日本における第2次世界大戦後の高身長化速度はこれよりもはるかに高かったが,21世紀にはいってからは非常におそくなり,現在はとまりつつあるようである。しかし,世界的にみても,高身長化が止まったことが観察された集団は少ない。高身長化,発育加速化は生活水準や衛生状態の向上と同時に進んできた。通婚圏の拡大による内婚率の低下によるヘテローシス雑種強勢)が時代変化の原因だとする説もあるが,仮にこのような効果があったとしても,環境要因,とくに栄養状態の向上の効果の方がはるかに大きいと考えられる。

 20世紀において,日本や韓国などアジア系集団では高身長化とともに,主として頭幅が大きくなることにより短頭化がおこったが,ヨーロッパ系の集団では高身長化とともに,主として頭幅が小さくなることにより長頭化がおこっている。ヨーロッパ系,アフリカ系の集団では,高身長化と同時に頭の高さ(バジオン・ブレグマ高)が大きくなっている。頭型の時代変化の原因ははっきりしないが,アジア系とヨーロッパ系・アフリカ系とで高身長化にともなう脳頭蓋寸法の変化傾向が違っていることから,短頭化,長頭化は,脳の発育加速と成長方向の集団差が関係していると考えられる。

 日本では,鎌倉時代以後,短頭化という脳頭蓋の形態の変化だけでなく,鼻根部の奥行きが深く立体的になる,歯槽性の突顎(いわゆる反っ歯)が弱くなる,歯並びが悪くなるという,顔面部の形態の時代変化もおこっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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