日本大百科全書(ニッポニカ) 「通婚圏」の意味・わかりやすい解説
通婚圏
つうこんけん
配偶者選択の範囲や集中度を示す指標。通常は婚姻が行われる地理的範囲の意味で用いられるが、地理的広がり以外に、社会階層や血縁などの他の指標によって通婚圏を分析することも可能である。これによって社会の地域的・階層的モビリティー(流動性)や閉鎖性の度合いを客観的に把握することが可能となる。
インドのカースト内婚や、部族社会に広くみられる氏族外婚などのように、社会によってはしばしば配偶者選択の範囲が制度的に制限されている場合があるが、こうした制度的な規制(外婚規制や内婚規制)がない場合でも、民族、地域、社会階層、職業、宗教などの、さまざまな社会・文化的要因で通婚の範囲がおのずから制限され、結果的に内婚あるいは外婚的傾向がみられることがある。通婚圏の分析はこういった傾向を明らかにしてくれる。たとえば日本の農村についていえば、西南日本では通婚圏は地理的に小さく、村落内婚的傾向がみられるのに対し、東北農村では村落外婚的な傾向がみられることが知られている。また同一村内では、家格が高い家や逆に極端に低い家の通婚圏は、村内の大半を占める中層の家の通婚圏に比べて大きいといった事実もある。
[濱本 満]