暗数(読み)アンスウ(その他表記)dark figure; Dunkelfeld

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暗数」の意味・わかりやすい解説

暗数
あんすう
dark figure; Dunkelfeld

現実に発生した犯罪のうち,犯罪統計では把握されない犯罪数をいう。一般には警察が認知した犯罪数を「犯罪発生数」とみなすが,厳密にはそれは「犯罪認知件数」にすぎず,被害者にも気づかれずに終る犯罪や,気づかれても警察に届け出がなされない犯罪も多い。真の犯罪発生数を統計的に正確に把握することは不可能であるが,暗数調査により犯罪の実数を推定する研究が行われている。犯罪学の新しい理論の一つであるラベリング論では,この暗数に注目し,従来のように犯罪そのものの原因を究明することよりも,なぜ特定の行為のみが犯罪として認知されラベルをはられることになるのかというラベリング (レッテルはり) の原因とメカニズムを究明することの重要性を指摘した。このような考え方によれば,犯罪統計は犯罪の実数を反映するものではなく,公的な犯罪統制機関の活動を記録するものにすぎないことになる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の暗数の言及

【詐欺】より

… 日本では捜査機関に知られる詐欺罪は,年間6万件前後である。しかし,警察には届け出られない事件(暗数)が,この数倍はあるものと推測される。被害者が届け出ないのは,被害金額が少ない,届けても被害は回復されない,といったことのほか,犯人が知人である,自分自身にも落ち度がある,といった理由によることも多い。…

※「暗数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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