電気伝導性をもつ有機化合物および有機錯体のうち,とくに電気伝導度の高い物質。したがって,その電気伝導度特性が,半導体特性をもつもの(温度の上昇とともに電気伝導度が増加するもの)と,金属的特性をもつもの(温度の降下とともに電気伝導度が増加するもの)とがある。その電気伝導度の発現は電荷移動に基づく。1954年,多環芳香族化合物の一つであるペリレンを電子供与体とし,ハロゲンである臭素,またはヨウ素を電子受容体とした電荷移動錯体が8Ωcmという電気伝導性を示したことによって,有機導体の研究が開始された。その電気伝導度特性は半導体性であった。60年,電子受容体としてのテトラシアノキノジメタン(TCNQ)の出現は,多数の電荷移動錯体を生み,電気伝導度は10⁻2Ωcmと半金属に近づく結果となった。これらの錯体は,いわゆるカラム型の構造をもつ。すなわち,相互に引き合う供与体と受容体の2種類の分子が交互に積み重なるのではなく,供与体どうしおよび受容体どうしがそれぞれ積み重なってカラムをつくっている。これが金属有機体organic metalの出現の原因となった。
さらに,テトラチアフルバレン(TTF)が合成され,73年その錯体TTF-TCNQが金属的電気伝導度特性を示すに至り,有機導体は,金属有機体として,その理論的および実験的研究が活発に行われた。80年,TTFの置換体(テトラメチルテトラセレノフルバレン)と五フッ化リンPF5との錯体が6.5Gbarの高圧下で超伝導を示すことが見いだされ,ここに有機超伝導体が出現した。一方,有機化合物からできる電荷移動錯体は,単に高い電気伝導性のみでなく,1010~1015Ωcmの絶縁体に属する範囲で光伝導性を示す。これを利用して,乾式複写機のホトレセプターを光伝導性電荷移動型高分子で置き換え,具体的用途が開けた。
執筆者:井口 洋夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…本来有機分子は,その美しい色(染料),よい香り(香料),そして生理活性(医薬品)など,分子1個1個の示す特性がその研究の対象であった。ところでナイロンやエボナイトなど分子が集合してできる有機固体の力学的性質の利用に加えて,電気的性質に着目した有機半導体および有機導体の研究が開始されたのは1940年代の終りである。これらは光や力学,磁性等の特性を生かした機能性有機固体の研究に展開し,たとえば耐熱性高分子や金属に代わる炭素繊維を用いた複合材料など応用面での著しい発展がみられた。…
※「有機導体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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