木枯森(読み)こがらしのもり

日本歴史地名大系 「木枯森」の解説

木枯森
こがらしのもり

現在の羽鳥はとりまきを結ぶ藁科わらしな川の牧ヶ谷橋付近の中洲に存在する小丘の森。県指定名勝。森の中には木枯神社(八幡神社)が鎮座する。近くを古代の東海道が走っていたことにより、景勝地として古くから歌枕とされ、「能因歌枕」に駿河国の歌枕の一つとして載る。「後撰集」に「こがらしのもりのした草風はやみ人のなげきはおひそひにけり」(読人知らず)、「枕草子」の「森は」の段にも「木枯の森」とある。ただし山城国の歌枕ともされ(能因歌枕)、現京都市右京区の木枯神社付近の森をさすともいわれ、その所在は判然としない。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「木枯森」の意味・わかりやすい解説

木枯森
こがらしのもり

静岡県静岡市葵区(あおいく)羽鳥にある県指定名勝地。「木枯ノ森」とも書く。藁科川(わらしながわ)の河床中央の中州にある長径100メートル、比高10メートルたらずの基盤岩の小丘を覆う森。東海道の歌枕(うたまくら)として名高い。現在、木枯神社や、本居宣長(もとおりのりなが)撰文(せんぶん)・佐野東洲(とうしゅう)書の木枯森碑などがある。JR静岡駅からバス20分。また、現在の京都市右京区太秦(うずまさ)にあった森も木枯森とよばれた。こちらも歌枕として知られる。清少納言(せいしょうなごん)が『枕草子(まくらのそうし)』で「森はこがらしの森」とたたえているが、これには静岡・羽鳥説や京都・太秦説など諸説ある。

[川崎文昭]

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