マキ(その他表記)maquis

翻訳|maquis

デジタル大辞泉 「マキ」の意味・読み・例文・類語

マキ(〈フランス〉maquis)

コルシカ島の叢林の意。犯罪者がよくそこに隠れたことから》第二次大戦中、ドイツ占領軍に抵抗したフランスの左翼系地下組織

まき

本家・分家の関係をもつ家同士をよぶ呼び名。同族。一族。東日本に多くみられる。まけ。

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精選版 日本国語大辞典 「マキ」の意味・読み・例文・類語

マキ

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] Maquis 「(コルシカ島や地中海などの)灌木地帯」の意。そこが犯罪者のよく逃げ込んだ所であるところからいう ) 第二次世界大戦中、ドイツ占領軍に抵抗したフランスの地下組織。
    1. [初出の実例]「フランスでマキ(抵抗軍)に参加するって」(出典:愛と知と悲しみと(1961)〈芹沢光治良〉七)

まき

  1. 〘 名詞 〙 同族集団をいう。本家・分家関係にある一族の称。

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改訂新版 世界大百科事典 「マキ」の意味・わかりやすい解説

マキ
maquis

〈しみ〉〈斑点〉を意味するラテン語に由来し,フランスでは地中海沿岸,とくにコルシカ島の密な低木林を指す。イタリアでもやぶや灌木の密生地をマッキアmacchiaと呼ぶ。この地方の森林のおもな構成樹種は,低地ではヒイラギガシ,コルクガシその他の硬葉樹とマツ類,高地ではナラ,クリなどの夏緑広葉樹であるが,夏に雨が少なくて著しく乾燥する地中海性気候と,石灰岩が多くて土壌も岩盤の保水力も乏しい土地条件に,長期にわたって反復された人為による森林の破壊が加わった結果,一般に林相は貧弱で,裸岩地帯に低木ないし中高木の林が斑点状に分布するだけの所が多い。低木林の中は見通しが悪く,野バラなどのやぶによって通行が妨げられるので,マキは昔からよく犯罪者の隠れ家になっていた。
執筆者:

18世紀中葉,コルシカがフランスの統治下に入って以後,その支配や導入される新しい法秩序になじまず,それと衝突したり,また,旧来の社会的紐帯が揺らぐなかで,かつての共同体の掟の行使が私的な争闘に転化して犯罪者として追われる人びとが増加した。こうした人びとがしばしば島内のマキに隠れすみ,〈山賊〉化し,19世紀のロマン主義的風潮のなかで,ときに,義賊,英雄のイメージで描かれた。メリメの作品《コロンバ》(1840)や《マテオ・ファルコーネ》(1829)はとくに有名である。

 第2次世界大戦においてフランスがドイツの占領下に置かれたとき,占領支配を逃れ,またそれに抵抗した者たちが多く山や森に隠れた。とりわけ1942年以降,義務労働徴用(S.T.O.)の制度が導入されて,当初,21歳から35歳までの青年層を対象に,翌年これが全フランス人に拡大され,人びとが強制的にドイツへ労働のために送られるようになって,山野に逃れる人びとは一挙に増大した。こうした者たちが各地でゲリラ活動をも展開し,レジスタンスの有力な部隊となった。彼らはマキに入った者の意味でマキザールmaquisardと呼ばれ,また,こうした活動に入った人びとを総称してマキと呼ぶようになった。フランス南東部のベルコールの山岳地帯でドイツ軍の包囲を受けて戦い全滅したベルコールのマキなどの名がよく知られている。
レジスタンス
執筆者:


マキ (槙)

俗にマキといわれる針葉樹の中には,スギ科コウヤマキマキ科イヌマキが含まれる。紀伊半島,高知・宮崎県などでは前者をホンマキ,後者をイヌマキという。古くは〈柀〉の字を当てた。ともに木材の耐朽性が優れているが,庭園樹としての品格はホンマキのほうが上である。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マキ」の意味・わかりやすい解説

マキ(フランスの対ドイツ抵抗団体)
まき
maquis フランス語

第二次世界大戦下のフランスその他で、ドイツ軍に抵抗した地域的団体。最初、住民の近づきにくい密林または山岳地帯maquisに潜んだ者がそうよばれたが、のちには一般に、地下抵抗運動者もそうよばれ、パルチザンやゲリラに近い形態となる。ドイツ軍は1942年末、占領をフランス全土に広げ、ドイツへ送る青年労働者の徴用を強化した。労働者、農民、外国人で、これを忌避し身を隠す者が増え、43年初めから抵抗行動を始めた。彼らはフランス南東部、中部、南部などでサボタージュ、情報活動、輸送・通信の妨害、地下宣伝に従った。組織化は弱く、2、30人の隊に分散され、安全のため絶えず移動。食糧、資金を略取し、そのため官憲に追跡もされたが、しだいに、抵抗(レジスタンス)の大組織に組み入れられた。武装して激烈なゲリラ戦も戦ったが、ドイツ軍による焼き払い、処刑、虐殺の報復も招いた。フランス・マキは44年初め、3~4万人といわれるが、国内抵抗運動のなかで、生活不安に発した民衆的要素であった。

[横田地弘]


まき

同じ村内の本家分家仲間(同族団)の呼び名。エドウシ、イッケ、ウチワ、イットウ、カブウチ、ジルイなど同姓・同系の家仲間の方言の代表名として、現在はなかば学術語にもなっている。しかしマキを広く血筋につながる親族の範囲に用いる地方もあって、かならずしも実際の用例は「同族(本家分家仲間)」に限られてはいない。東日本一帯に広く分布する親族関係用語で、おそらくは「まとまり」を意味する古語に源流するところであろうが、広く血筋、血統、血縁による仲間を意味したり、あるいは同一村内の同系出自の家々(同族)の仲間だけに限定するのは、それぞれの地方の実態に即して、のちに分化したのであろう。マケ、マギ、マゲともいうが、その語源は明確ではない。

[竹内利美]


マキ(樹木)
まき

イヌマキ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マキ」の意味・わかりやすい解説

マキ
Maquis

第2次世界大戦中のビシー政府 (1940~44) 下の南フランスでレジスタンス運動の中核となった組織。語源はコルシカ語で「雑木林」を意味する。対独降伏後のフランスでは各種のレジスタンス運動が発生したが,特に 1943年の強制労働法によってドイツの労働徴発が激しくなり,徴兵が行われはじめると,青年たちは南フランスの山中や森林に逃れ,武装ゲリラを組織,これにユダヤ人,スペインの亡命兵士,ベルギーオランダポーランドからの亡命者,さらに逃亡ソ連軍捕虜が参加した。この集団がマキで,多くの場合1組織の構成員は 50人以下であったが,総数は 43年末に約3万人に上った。政治的傾向は多様であったが,多くは共産党系で,きびしい報復を受けながらもドイツ軍に恐怖を与えた。 44年2月1日フランス国内軍に正式に編入され,同年6月の連合軍フランス上陸後は,ドイツの撤退後の再占領や連合軍支援の軍事作戦を展開した。

マキ(槇)
マキ
Podocarpus macrophylla; yellow wood

マキ科の常緑高木で,イヌマキ,ホンマキ,クサマキなどともいう。房総半島以南,四国,九州,沖縄の主として太平洋側の暖地の山地に自生し,また中国大陸南部でも知られている。樹皮は灰白色で縦に裂け,薄片となり脱落する。葉は線形ないし披針形で長さ 10cmほどあり,先端が鈍くとがり,厚質で,上面は濃緑色,下面は淡緑色,中央の太い主脈が隆起する。雌雄異株。春,小枝の側方に短柄のある黄白色で円柱形の雄花穂を3~5本ずつ腋生する。雌花は葉腋に単生し,緑色の果托が目立つ。種子は球形で熟しても緑色,果托は暗赤色に熟し甘みがあって食べられる。材は建築,器具,下駄の材料になる。千葉県の県木。生垣に多く用いられる。本種より葉が短く密生するラカンマキは本種の園芸品種である。

マキ
maquis; macchie

マッキー,マキーともいう。地中海の沿岸地帯に発達する硬葉の亜高木ないし低木樹林群系の一型。コルシカ島でマキと呼ばれるイシガシの叢林はその典型で,名称もそれに由来する。エリカ,エニシダ,キョウチクトウなどが混生し,良質の土壌地帯では放置すると森林になる場合もある。また地中海西部の地域ではコルクガシがおもな構成植物となっている。

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百科事典マイペディア 「マキ」の意味・わかりやすい解説

マキ

マキ科の常緑高木。イヌマキとラカンマキがある。イヌマキは本州(関東以西)〜沖縄の山地にはえる。葉は密に互生し,線形で大きく,表面は濃緑色,裏面は淡緑色をなす。雌雄異株。5〜6月開花。雄花穂は葉腋につき黄緑色,雌花は1個ずつ葉腋につく。果実は球形白緑色で,赤紫色肉質の花托の先につき,秋に成熟。変種のラカンマキは中国原産といわれ,各地に植栽される。低木性で,枝はほとんど下垂せず,葉は小型で上を向く。ともに樹を庭木,材を建材,器具,おけなどとする。なお,コウヤマキ科のコウヤマキをマキ,ホンマキということもある。
→関連項目コルシカ[島]

まき

日本における社会構成の一単位で,同族をさす。親族とは異なり,姻族は含まず,また六親等より遠い同系のものをもその範囲に含める。→同族

マキ

第2次大戦中,ドイツ占領下のフランスで山野に隠れ抵抗運動に従事した地下武装集団の一種。原義はコルシカ島の低木林のこと。1942年ころから学生,労働者が各地に組織し,1944年フランス国内軍に吸収された。→レジスタンス

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デジタル大辞泉プラス 「マキ」の解説

マキ

アメリカのSFテレビドラマ・映画シリーズ「スタートレック」に登場するレジスタンス組織。惑星連邦とカーデシア連合の紛争の中で発生した反カーデシアのテロリスト集団。

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世界大百科事典(旧版)内のマキの言及

【家】より

…また本家・分家の関係は,一族の氏神の祭祀や墓地の清掃整備を共通することなどによって,血縁関係の濃薄にかかわらず継続した。それは同姓とか一マキなどと呼ばれて,婚姻による縁戚関係とは別なものであった。田畑の細分の制限令などにより農民の分家はしだいに減少するが,新田開発等によって新しい家の増加は継続していた。…

【同族】より

…本家とその親族分家や奉公人分家,また直接分家だけでなく間接分家(分家の分家,すなわち孫分家とか又分家と呼ばれた家)をも含む組織集団。農山漁村社会でマキ,マケ,マツイ,カブウチ,イッケ,クルワなどとも呼ばれ,商人社会ではノーレンウチなどとも呼ばれた。社会学,民族学,民俗学,社会人類学によっては同族団(同族集団,同族団体,同族組織)と呼ばれ,国際学界でもdozokuの名でとおり,クランclanやシブsibとは区別されている。…

【フランス】より

…雨はこの高気圧が弱まり,シベリア高気圧との間の谷間に低気圧が進んでくる秋からで,降るときは強く,溝をうがち奔流となって表土を押し流す。そのため森林は育たず,マキmaquisと呼ばれる植物群落やガリグgarigueと呼ばれる灌木のやぶなど夏の乾燥に耐える低木の疎林となり,耕地は灌漑されるものが多い。冬は一般に温暖であるが,西からやってくる低気圧が地中海上で発達すると,内陸の高気圧からローヌ河谷に向かって寒い北風が吹き込む。…

【フランス】より

…雨はこの高気圧が弱まり,シベリア高気圧との間の谷間に低気圧が進んでくる秋からで,降るときは強く,溝をうがち奔流となって表土を押し流す。そのため森林は育たず,マキmaquisと呼ばれる植物群落やガリグgarigueと呼ばれる灌木のやぶなど夏の乾燥に耐える低木の疎林となり,耕地は灌漑されるものが多い。冬は一般に温暖であるが,西からやってくる低気圧が地中海上で発達すると,内陸の高気圧からローヌ河谷に向かって寒い北風が吹き込む。…

【レジスタンス】より

…抵抗は,パルチザンに参加しあるいはそれを支持した農民たちにとって,オスマン帝国の支配に抗したかつての民族的誇りを回復し,義賊たち(ハイドゥク)の伝説を呼び覚まし,みずからの解放をかちとるためのたたかいだったのである。
[フランスのマキ]
 西ヨーロッパにおいて,フランスの場合には,ド・ゴールがロンドンにおいて武装勢力たる〈自由フランス軍〉を組織した。それはビシー政府とは一線を画し,フランスを敗北に導いた軍とは異なる新しい機構による組織が目ざされた。…

※「マキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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