日本大百科全書(ニッポニカ) 「木登り用器具」の意味・わかりやすい解説
木登り用器具
きのぼりようきぐ
林業を営むうえで必要な各種の木登り用の道具。種子の採集や枝打ちあるいは木材運搬用の集材機、林業索道に使うケーブルの架設などには、木登り作業が必要である。各種の木登り用梯子(はしご)、着脱式ステップ、木登り用スパイクが広く使われているほか、鉤(かぎ)付き竹竿(たけざお)、ブリ縄などがある。
ブリ縄は、高野(こうや)地方から発達し、木曽(きそ)地方などの山深い有名林業地に広く普及した日本独特の木登り用具である。直径1センチメートルあまり、長さ10~15メートルの棕櫚(しゅろ)縄の両端に、直径4センチメートル、長さ50センチメートル程度の、主としてヒノキ製の強度のある棒(ブリ木)を結んだ独特のものを使用する。まず、ブリ木を木の幹の手の届く高さに水平に棕櫚縄で縛り付け、かけた縄を足掛りとして、ブリ木の上に登り、ついで、縄の他端のブリ木を手の届く位置に前者同様に縛り付け、そのブリ木に登ったら、縄を遠隔式に振りほどくことによって下のブリ木を外す。何回もこの動作を繰り返すことによって、所定の高さまで安全に木登りすることができる。
鉤付き竹竿は、竹竿の先端にフックをつけたもので、フックを立ち木の下枝にかけ、つり下げた竹竿を手で握り、足で挟んで樹幹に寄せて木登りするが、高い木には不適である。
木登り用梯子には、持ち運びしやすいようにくふうした2段から数段の継ぎ足し式の、全重量3~8キログラム程度の軽合金製が広く採用され、一本梯子型と二本梯子型がある。
着脱式ステップは、硬質軽合金製ステップを、長さ1メートル余のロープで、木登りする樹幹に30~40センチメートル間隔で順次取り付け、それに足をかけ、腰から樹幹に回した安全ベルトで身体を樹幹に沿って支えながら木登りする。
木登り用スパイクは、両足のスパイクを樹幹に突き刺してステップとし、安全ベルトを使って木登りするもので、各種のスパイクがある。
また樹幹の太さに応じて挟めるようにくふうした移動式ステップを両足につけ、同じく安全ベルトを使って木登りするもの、腰掛け式木登り器などもある。
[山脇三平]