ステップ(読み)すてっぷ(英語表記)steppe

翻訳|steppe

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステップ」の意味・わかりやすい解説

ステップ
すてっぷ
steppe

もともとはウクライナからカザフスタンにかけての広大な温帯草原をさすことばであったが、ドイツの気候学者ケッペンが世界の気候区分を行った際、熱帯草原まで含めてステップ気候(BS気候)を設定したため、適用範囲が拡大された。一口にいえば、湿潤な森林地帯と乾燥した砂漠の中間を占める植生帯のうち、雨が少ないため樹木を欠き、イネ科やキク科の草本を主体とする草原がステップである。広義にはプレーリーパンパなど丈の高い草からなる草原も含むが、温帯の草丈50センチメートル以下の草原に限定してこの語を用いることも多い。

 気候的には降水量がおよそ年間250~500ミリメートルの地域に出現し、土壌は栗色(くりいろ)土壌ないし厚い腐植層をもつ黒色土壌である。分布域は旧ソ連地域南西部のほかモンゴル、アフリカのサヘル地方、南アメリカのベルド、北アメリカのグレート・プレーンズなどで、雨の比較的多い所は農耕地化されているが、牧場や遊牧地に用いられている部分が多い。近年多くの地域での過放牧や無理な耕作に起因する砂漠化の進行は、住民の生活をますます苦しくしている。

[小泉武栄]

植生

ステップではイネ科植物のウシノケグサ属、ハネガヤ属のほか、キビ属、ウシクサ属などがおもな構成種となるが、乾燥と湿潤の度合いによって広葉型草本種(中央アジアの乾燥したステップではヨモギ型植物)が主要な構成種になることもある。また、ステップのなかには塩性ステップのように耐塩性の強いアカザ科植物が優占する群落もある。

[大賀宣彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ステップ」の意味・わかりやすい解説

ステップ
steppe

温帯草原。植物群系の一つ。温帯降水量の少ない平地に発達する。イネ科を中心とした大草原のうち,特にロシア,中国のものをいう。広義には熱帯を含めて砂漠周辺などの木のない草原全般や,プレーリーパンパス南部アフリカの草原などをいう。雨量は年に 250~600mmくらい。草の 1年間の純生産量は 1m2あたりの乾量が,乾燥地で 400~900g,雨の多いところで 900~1000gくらいである。ヒツジやウシの放牧に利用されているところもあるが,農地になっているところも多い。ユーラシアでは降水量が多くなると,森林ステップを経て落葉広葉樹林(→落葉樹林)になり,乾燥するとヨモギ類などの生える半砂漠に移行する。

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