① ヤシ科の常緑高木。九州の沿海地の原産で、今日では観賞用などに暖地で広く栽植される。幹は直立して高さ三~七メートルになり、棕櫚皮という黒褐色の繊毛のある古い葉鞘(ようしょう)に包まれる。葉は幹の先端に叢生し、長柄をもつ。葉身は径六〇~九〇センチメートルの扇形で線形の裂片に深く裂ける。裂片の先端はとがり中脈をはさんで多くは二つ折れになる。雌雄異株。春、淡黄色の小花を多数密につけ、下部に大形の仏炎苞(ぶつえんほう)がある。果実は径約一センチメートルの球形で黒熟する。材は床柱・欄干・撞木(しゅもく)に用いられ、棕櫚皮の繊維で綱・敷物・箒・たわしなどを作る。漢名、棕櫚。わじゅろ。〔十巻本和名抄(934頃)〕