改訂新版 世界大百科事典 「木製品工業」の意味・わかりやすい解説
木製品工業 (もくせいひんこうぎょう)
主として製材,ベニヤ板,合板などの木製基礎資材を製造する産業,ならびにこれらの木製基礎資材や竹,籐などを主要材料とする製品を製造する産業。日本の産業分類(1993年10月改訂)によれば,中分類の木材・木製品製造業と家具・装備品製造業(ただし金属製家具製造業,マットレス・組スプリング製造業を含む)がこれにあたる。それぞれの出荷額をみると,木材・木製品製造業は4兆2264億円で,そのうち一般製材業(1兆5624億円),合板製造業(8551億円)の比重が大きく,続いて木製容器製造業(2333億円)となっている。家具・装備品製造業は3兆7440億円で,そのうち木製家具製造業(1兆6976億円)が最も多く,続いて建具製造業(7350億円)となっている(数字はいずれも1995,《工業統計表》による)。これらのうち製材業については〈木材工業〉,合板工業については〈合板〉の項を参照されたい。ここでは木製家具製造業についてふれる。
日本の木製家具製造業は豊富な木材資源に恵まれたことに加え,古くから建具,指物技術などが基盤として発展してきた。しかし,第2次大戦が始まるまでは,職人の技能に頼る小零細業者を中心とする家内工業的色彩が強かった。その近代化は,戦後の占領軍とその家族による洋家具の大量発注を契機に進んだ。
木製家具はかさばるため,運搬コストの問題から消費地に近接した地域に事業所を立地する場合が多く,企業は全国にわたって分布している。それでも前橋市(群馬県)の食器棚,静岡市や徳島市の鏡台,大川市(福岡県)や日田市(大分県)の応接セットなどの産地が形成された。日本の木製家具製造業の特徴は,(1)多数の零細企業の存在,(2)多品種少量生産,(3)強い問屋の発言権(資金の面倒をみるとともに製品価格を決定するなど)などである。
執筆者:青木 良三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報